「Loser's Parade」

for さえない日々

金剛地武志は稀代の音楽家である

結局26時間テレビはほとんど見ず、気になっていた深夜部分(紳助×さんまとかかま騒ぎとか)はYouTubeで補完した。その他の部分もちらちらとチャンネルを変えては見るものの、どうも「全然関係のない学校の学園祭を見せ付けられている感覚」に取り残されるし、見る気をなくした。ただ、気になっていたことはあった。何の因果か、エルマロと「“裏”渋谷系番長」の異名を分かち合っていたはずの人物が、“表”も“表”であるところのこのテレビ番組に出演していたのだ。その名は、金剛地武志


彼のことを“ミュージシャンなのに今は変なことをやっている人”という認識はあったものの、その作品に触れる機会は今までなかった。ところが、引っ越しの荷造りをしている最中に相方のCDストックの中からyes, mama ok?の「Q&A 65000」を見つけた。「あ、これ一回ちゃんと聞いてみたかったんだよなー」なんて軽い気持ちでiPodに落としたところ、度肝を抜くことになったのです。ド頭1曲目には下手糞なドラムを叩きつつ奇声を上げながら歌う(?)『春咲小紅』のカバーでいきなりぶっ壊れてて「ええ!?」と思ったら、次の曲『Q&A call 65000』がサーフロック調で超ドポップな仕上がりの曲で一気に引き込まれる。更に続く『keep frozen』ではボーカルに無線のような加工をしていてちょっと切なく、『二枚舌のムニエル』ではボサノバ、サンバ風で歌詞共におしゃれ。かと思えば『jamboree-hahaha』ではボーイスカウト出身という金剛地ならではジャンボリーの歌をパンクバージョンですかし、問題の『Q&A #1』『Q&A #2』はなんとメンバー(金剛地、高橋)の母親との電話の会話が収録されている。しかしその間に挟まる『問と解』は歌詞含め名曲。『I'm crazy to want you』なんて渋谷系ド真ん中なポップ曲の後は、メロも歌詞も展開も泣きの『最終定理-post modern living-』で終焉を迎える。なんだこれ!ムチャクチャだ!最高!!恐ろしいのがこのアルバムが発売されたのは今から12年前の1997年。あまりにも実験的過ぎる。
もうすっかりyes,mama ok?の虜になってしまい、ネットで過去の情報を拾い捲ったのですが、3年前にはトリビュート盤が、そして昨年にはすでに廃盤になっていた全アルバム(ただし『CEO』除く)のコンプリートボックスが発売されている。yes, mama ok?を望む人、つまり金剛地武志の音楽復帰を望む人はまだまだ多い。それははてなキーワード「yes,mama ok?」の解説ページのやけに充実した解説からも読み取れる。
yes,mama ok?というのは、メンバーは金剛地と高橋晃の二人。以前は女性ボーカルの仲澤真萠も参加していた。各メンバーの担当は、これがなかなか面白いのが、金剛地がすべての音楽面を担当。つまり、作詞作曲編曲プロデュース、果ては全楽器を担当している。そして相方である高橋の担当はジャケットデザイン等のビジュアル面で、たまにボーカルやSAXを担当する程度。前にいた仲澤もボーカルのみの担当で、音楽面は一切関わっていなかったとのこと。つまり、金剛地はエアギターどころか、ギターはもちろんのこと、ベースもドラムも演奏し、打ち込みもしている。曲はとても人懐っこいポップメロから泣きのメロまで生み出し、歌詞を書けばとても哲学的で言葉のチョイスも面白い。要するに、音楽面に関しては全方位対応可能なのである。余談だが、小山田圭吾は高校の後輩で、文化祭で一緒にバンドをやったそうである。ちなみにそのときのパートはベース。だから元々ベーシストなのだろうか、yes,mama ok?の曲は独特のコード進行も聴き所だけど、ベースラインも素敵。yes,mama ok?の頭文字を見てわかるとおり、金剛地YMOのファン。そのためにこのようにCDの合間に無駄要素を入れることに対して抵抗がなかったという。ライブも過去の記事を読む限りはかなりスゴかったようで、あのパラダイスガラージの豊田道倫が惚れ込んだせいで金剛地をプロデューサーに迎えた曲もあるとのこと。ああ、見てみたかった。というか…見たい!
昨年に“インコンプリート”アルバムが発売された際には、金剛地から動画で「そろそろ音楽を…」というコメントを得た。そのアルバムにはゲーム「シーマン」のプロデューサー斎藤由多加氏がものすごいアツい寄稿をしていたり、中日スポーツの記者が熱心に取り上げていたりと、金剛地待望論は盛り上がる一方である。「エアバンド」とか言って、CDを出してる場合なのか?それでいいのか、金剛地
確か初めて紳助と絡んだのは「行列のできる法律相談所」だったと思う。そこからどんな経緯で紳助が金剛地を気にいってしまったのかは分からない。気がつけばいつの間にか人気ゴールデン番組に準レギュラーになっていた。両親から心配されていた過去よりも、今は環境が変わった。そっちの仕事が忙しいのは分かるけど、あなたの本当の才能を知っているのは、少なくとも紳助ではない、10年以上前から追いかけているファンのみんなである、と言いたい。私は、是非とも金剛地の「本気」モードを見てみたいと願うばかりだ。



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ちなみに、「LD&Kレコード」の名付け親って、金剛地武志なんですね!元々はymo?のために作られたレーベルだって知ってびっくりしました。