「Loser's Parade」

for さえない日々

パルコ・プロデュース「裏切りの街」@PARCO劇場

裏切りの街
今回の演劇で取り巻くのは「逃げ」だったのだが、身に覚えがある自分にとってはグサグサと刺さりまくり。別に不倫をしただとか孕ませたとかではないが、仕事で非常に悪い状況になり、しかしその場から逃げ出し、状況をもっとひどくしてしまったことがある。なかなか言い出せない、その場をなんとか乗り切るだけで先のことを考えていない。要するに「後回し」をついついやってしまう。そんな自分だからこそ、見ていてぞくっとしてしまった。自分の弱いところを思いっきり言い当てられているようで。
自分は今回三浦大輔作品を見るのは初めて。もちろん名前は知っていたし、ポツドールの名前は以前から知っていた。「役者を陥れてまで、舞台上でリアルを表現する」「救いがない」「過激」というイメージを持っていたので、これまで何度も見に行きたいとは思っていたけど、なんだか怖くてポツドールの公演には結局行っていない。そんな自分なので、今回ポツドールが行うものではない公演が、いつもの三浦大輔節が出ていたのかはわからないし、「これじゃ物足りない!」という人ももしかしたらいるのかもしれない。だけど、十分いや〜な気分になった。特にラストシーンは、結局救いがない感じでこれもなんだか「あー…」という感じ。「いや」と言えば、今回登場人物の中で一番いや〜な感じだったのは松尾スズキ演じる人物。イヤ、というか、一番悪い、とでも言うべきか。最初の方こそ独特の台詞回しや動き、言葉のチョイスで笑ってはいたが、どんどん素性が明らかになっていくと笑うことも少なくなっていった。特にある暗転直前のシーンは怖い怖い。
しかし、怖いだけではない。随所には笑いどころもちゃんとあって安心した。自分が特に気に入っていたのは、田中圭秋山菜津子の二人がブラックマヨネーズで意気投合するところ。「女でブラマヨ好きって初めて会った」と言って二人が打ち解けていくのが、お笑い好きの自分にとってツボ。更には「パンクブーブーでM1は終わりましたよね」「でもその前のNON STYLEの時点で終わったっていう気もします」「「M1って、ブラマヨが優勝した年がピークでしたよね」という、お笑いファンだったら誰もが一度は口に出したことのあるセリフまで出てくる。三浦さんて、テレビ好きなんですか?あと、この二人は「リンカーン」を毎週見ているという設定で、実際にそういうシーンも出てくるのだけど、「小杉が全裸で階段から落ちてくるやつ、最高でしたね」と言っていたリンカーンは自分も見てました。確かにあの回は最高だった。「でもリンカーンって、当たりはずれが大きいですよね」というセリフがあったら最高でした。
それにしても登場人物の住所が東京の「吉祥寺」と「東中野」で、「荻窪」で落ち合ったり「西荻窪」で出会ったりと、その界隈の住民である自分には馴染みがありすぎて、すぐに情景が浮かんできてしまったのですが、この「吉祥寺」と「東中野」のニュアンスって、東京に住んでいる人たち以外には伝わるのだろうか?その微妙なニュアンスがなくても通じるといえば通じるのですが。余談ですが、西荻のラブホって2つあるけど、こけしやの隣のヤツか、伏見通りのヤツかどっちのだろうか?と、西荻住民は考えてしまいました。
濡れ場もあったし、田中圭のオナニーシーンまであったものの、そこまで過激的だとは思わなかった。別に過激なシーンが見たいわけではないが、「ならば」と、今度は本拠地であるポツドールの公演を見てみたいと思ったのでした(恐る恐る)。


ところで、今回の音楽は銀杏BOYZが出かけていたと聞いてはいたが、舞台を見終わったときに「なんだ、結局『ピンクローター』の曲を提供しただけだったのか」と思ってしまっていたのですが、ロッキン・オン兵庫氏によると、劇中の音楽もすべて銀杏が手がけていたそうな。銀杏BOYZのあの姿からは想像ができない。だって、打ち込みっぽいのも、ストリングスもあったし、絶対こんなの作るわけないって思ってしまってました。こういう曲を作れる底知れなさに驚く。