「Loser's Parade」

for さえない日々

バンドから変な音楽集団へ〜さようなら今年!サケロック、暮れの元気なご挨拶@渋谷AX

様々な思いでいっぱいになるライブでした。


田中馨SAKEROCKをこの日で脱退する、つまりラストライブである今回。4人での演奏はこの日が最後となる。これから起こることすべてを受け止め、一生の思い出として心に刻む思いで見に行って来ました。会場である渋谷AXの入口近くには、日比谷野音でステージ上に飾られた4人の姿をしたトーテムポールが。開演5分くらい前に会場に入るとすでにフロアはいっぱい。前の扉は人で溢れかえり入り切らないほどだったために泣く泣く後の扉から入場。すでに何かしらの音声が流れていたのでふとステージ方面に目を向けると、ステージに貼られた幕にこれまでのライブ映像がダイジェストで流されていた。
途中から入場したのでどのライブから始まったのかはわからないが、「下北沢インディーファンクラブ2010」ではパンパンのシェルターで『京都』を演奏しているシーン。「フジロック2010」では『会社員』を演奏中にハチに襲われてドラムを叩きながらカメラに向かって「ハチ!ハチ!!」と助けを求めている伊藤名人の姿。「したまちコメディ映画祭2010」では『スーダラ節』2番の歌詞を忘れて「歌詞を忘れた〜誰か教えて2番の歌詞を〜」と歌っているリーダー。2009年にここAXで開催された「ホニャララのツアー千秋楽」ではピーターパンのように宙を舞って『生活』を演奏するハマケン。「大先輩 vol.1」で旧メンバーの野村卓史を迎えて演奏しているシーン。「ビルボード東京」でのライブは、『KAGAYAKI』演奏中にステージバックのカーテンが開かれ夜景が現れるシーン。そして、9月に行われた「日比谷野外大音楽堂」では『MUDA』を演奏し、観客が楽しそうに踊り狂っているシーンなどなど…。これら数々の名場面がダイジェストで流されていた。いやいや!ダメだって!「ハチ!ハチ!!」にはさすがに笑うしかなかったけど、これはもう泣きそうだって!だいたいその場にいた自分にとってはそれだけでフラッシュバック現象が起こっちゃう!そんな感情を引き起こし、最後にどこかのライブ会場で彼らが楽器をシャッフルし「カシュー&ナッツ」として即興演奏をしている場面のあと映像は暗転し、「さようなら今年!サケロック、暮れの元気なご挨拶」「まもなく開演です」というメッセージが映し出され、いよいよ4人体制のラストライブが始まったのです。


ゆっくりとメンバーが姿を現し、各自セッティングに入る。まず1曲目として演奏されたのは、ここ最近のライブと同じように『進化』。セットリスト1曲目がいつも通りということに、「最後だからって、いつもどおりにライブをするぞ」という意気込みを感じられた気がしたのだけど、それは半分は正解で、半分は間違いだった。続いて始まったのは『ラディカル・ホリデー』。この曲は一時期テンポを落として『電車』という曲名になったこともあったのだけど、ここ最近は再び曲名が戻った曲だ。この曲は勢いがある曲なのだけど、特に馨くんのベースの気合が感じられるものだった。
その勢いのまま、昔から演奏されている『穴を掘る』へ。ああ、この曲を4人の演奏で聴くのは最後なんだなぁ、なんて感傷的に見ていたら曲終わりに「やっぱ好っきゃね〜ん♪」とリーダーとハマケンが歌いだした。この試みは「songs of instrumental」レコ発ツアーの頃に行われたもの(そのときはハマケンにだけ歌わさせていた)で、先日の野音ライブでも行われたのだけど、何か「感傷的にはさせない」「いつでもくだらないことをする」という意気込みが見え隠れした。野音のときも思ったのだけど、二人がボーカルとしての能力を最近の個人活動でレベルアップさせているせいでやたら綺麗なハモりを見せてそれがまた可笑しかった。
ここでMCへ。この内容が、別に馨くんが最後だっていう気持ちがあふれているわけでもなく、あくまで自然に、いつもどおりに星野+浜野によるゆるい感じで進めていくのがよかった。ハマケンはいつも通り話を聞いてなくてピントの少しずれたことばっか言うし、リーダーはソロライブやラジオのときもネタにしているTHE BAWDIESのROYをdisするノリをしてるし。かといって、さすがに触れないわけにはいかない。順番に自己紹介をしていき、馨くんの番になると客席からの拍手は何かを訴えかけるように特別に長いものとなった。ここでリーダーから、「今回のツアーで馨くんにあだ名ができました。"バンドやめお”です。」と、かつてユニコーンから一度脱退した川西さんが付けられたアダ名「ヤメマン」を踏襲しているのだろうか、今回の件をそんなネタに昇華していた。このツアー中、全箇所でそう言われてきたのであろう。馨くんも堂々と「どうも、やめおです」と挨拶。ちなみにこの日のファッション、YIMOさんデザインの「グリーンモックス」Tシャツを着用。グリーンモックスは「MUDA」で曲として収録されているが、元ネタはコロンビアの市長だった人の名前。かつて荒れ果てた学校で教師だったモックスは、話の聞かない生徒に対していきなり自身の尻の穴を見せ付けて黙らせたという伝説の持ち主のようで、その変なところが気に入ったらしい。そこからハマケンが「そういや馨くんって全裸キャラだったよね」と昔話を始める。「そうだっけ…?」と戸惑いつつも、「昔、足湯に全裸で漬かったことがある」という話に。この様子はSAKEROCKが初めて出したDVD「ぐうぜんのきろく」にそのときの映像が収録されてますね。深夜に行ったそうですが、「そのとき偶然通りかかったおばちゃんに『あら、いいものを見せてもらったわ』って言われた」そうです。ちなみに大地くんは旅行でその場所(松江)を通りかかったときにそのことを思い出して旅行気分が台無しになったそうな。「そういやそのツアーのときにスピード違反で警察に捕まったね。馨くんって警察に捕まるキャラでもあったよね。その足湯の件ももし警察が通りかかってたら捕まってたかもしれないね…」と突っ込む星野リーダー。
続いて大地くんの紹介となったが、トラブルに巻き込まれていた彼は喋りたいことがたくさんある模様。この日は朝に別のライブで大阪にいた大地くん。新幹線で東京に向かうはずが、雪の影響で線路内に木が倒れて運転見合わせ状態となってしまい、急遽飛行機に乗り換えていたTwitterではそこで話は終わっていたのだけど続きがあって、羽田から車が置いてある東京駅まで向かう途中の山手線にて、スネアやシンバル、その他旅行バッグを積んだ総重量40キロ以上のカートを降ろす際に電車とホームの段差の衝撃でカートの車輪が壊れてしまい、満員の山手線内でドラムがバラバラになってしまったらしい。その影響で、結局東京駅に到着したときには、途中で乗り換えた新幹線が東京駅に着いていたらしい。そんな交通トラブルに遭ってしまった大地くんだが、リーダーいわく、「大地くんが交通トラブルに巻き込まれたときはだいたいその日の演奏はいい」そうな。確かに、この日のドラムは今までで一番すばらしかった。「まあね、なんかいろんな思いはありますが、ツアー中もくだらない話しかしていないです。なのでいつもどおりの演奏ができればいいなと思っています。あと、後で面白いことが起こるので楽しみにしておいてください」とリーダーが締めて、続いて『菌』が演奏された。


ハマケン作曲の定番曲『菌』。この曲でも、やはり今回の気合が感じられたのはベースだった。いつも以上にうねうねと力強くラインがとにかくかっこよかった。そしてそのままアウトローから合間なく続けて演奏されたのは代表曲『慰安旅行』。このノンストップでつなぐところがすごくかっこよかった!この日は自分が会場の少し後ろにいたせいでスピーカーの音がよく聞こえたのか、はたまた音響が良かったのか、ベースの音がいつもよりはっきりと聴こえた。ああ、そうだったなぁ、この曲っていつ聴いてもリズム隊が同じフレーズを奏でることはなかったなぁ、なんてことを思った。この曲のアウトローではベースで「さいたーさいたーチューリップーのーはーなーがー」と弾く遊び心も。
続くは『モー』。イントロでギターとトロンボーンのフレーズをベースが1小節遅れて、輪唱のように演奏されるのがここ最近のアレンジ。それにしてもこの日はベースの音がすばらしくよく聴こえたおかげで、この曲でかなりフリーキーに、でもはみ出しているように聴こえてボトムを支えている演奏が堪能できた。その後の『WONDER MOON』でもそれは同じで、音源で聴く倍はベースの音数が多いように聴こえる。そしてこの曲でのベースのスライドアップが大好きだ。ひとつひとつの曲を、これで弾き納めかのように大事に、でもいつもより力強くアグレッシブに弾いていく馨くんに答えるように、大地くんのドラムも激しさを増していく。今まで勢いのある曲が続いたところで『グリーンランド』、『老夫婦』、そして『今の私』で落ち着いた演奏を…なのだけど、まぁこっちの気持ちは落ち着くわけはないわけで。特に『今の私』なんて、田中馨作曲の中でも屈指の名曲。これが4人で奏でられるのは今日が最後だって思うと、余計に切なく聴こえて仕方がなかった。


そんな切なくなったところで再びMCに戻り、星野と浜野のぐだぐだ喋りが始まる。やれ「人の顔がいっぱい!こんだけ人がいてみんな違う顔なんだ!」「でも誰かに似てるって認識しようと脳が働くんだって。そうしないと情報量が多くて脳が破壊されちゃうんだって」「え?どういうこと?」とか、「ハマケン、さっき弁当食ったでしょ?おなか一杯になったらまた音を外しちゃうから馨くんに『ダメ!』って言われてたのに!」「スタミナ切れしちゃうからね」とか、「この11年振り返ると、ハマケンの心配ばっかしてたなー」「え、そうだったの?」とか、「あのさー、童貞こじらせてるってヤツいるじゃん」「え…オレのこと?」「え…童貞なの!?」「お前は童貞の何もわかってない!寺坂さんがここにいたら一緒に袋叩きにする!」などなど。しかし、これらは、これから起きる前説でしかなかったのだった。
ここでいきなり今回のライブのハイライトが登場してしまった。星野リーダーが一連のダベりのあとに言った言葉で会場を騒然とさせる。「…いや、なんか、このあとすごいことが起きるから引き伸ばしてみようって思ったんだけど、どんだけ話しててもこの後のことのほうがすごくて勝てないな。…馨くんが歌うんだよ。」この衝撃の展開に会場からは「えー!?」の大合唱。「…僕も『えー』です」とは、今日はさすがによく喋る馨くん。「馨くんが歌いたいって言うからね。インストバンドだけど、歌っていこうよ」「うん、歌う。1600人の前で、オレ歌う。」と、なぜか少々カタコトになる馨くん。そしてハマケンの前にはキーボードが用意され、トロンボーンからキーボードにパートチェンジ。「今宵、田中馨が歌います。それでは聴いてください。『時代おくれ』。」とリーダーが前口上を入れてみんなの演奏をバックに、ちょっとつたないハマケンのキーボードをバックに、馨くんがハンドマイクでスタッフからもらった花束を持って歌いだすのは河島英五の『時代おくれ』!!

一日二杯の酒を飲み
魚は特にこだわらず
マイクが来たなら 微笑んで
十八番(おはこ)を一つ 歌うだけ

目立たぬように はしゃがぬように
似合わぬことは 無理をせず
人の心を見つめつづける
時代おくれの男になりたい

いや、あの、あまりの熱唱と、リーダーのあまりに渋いギターソロに笑っちゃったんだけど、この歌は本当に馨くんピッタリ!「時代おくれの男になりたい」なんて、ちょっと今回の脱退の件と重なって聴こえてしまった。熱唱後、「どうだった?」と聞かれても「うん…歌った…」と若干放心状態になっているその姿が面白かった。


「それでは、僕も歌っていいですか?」と始まったのは『スーダラ節』。インストバンドなのにメンバーがどんどん歌いだすという不思議な光景に。最終的にはトロンボーン吹いてるので歌えないハマケン以外はみんなが歌いだした。つくづく、不思議なバンドだ。こうして不思議な余韻を残したまま、演奏されるは異国の匂いがする曲『テキカス!』。怪しい雰囲気のするこの曲で気分が盛り上がってきたところで曲の切れ間なく『七七日』へ突入。『菌』〜『慰安旅行』のときもそうだったけど、この繋ぎが非常にかっこよかった。このあたりから、伊藤大地のドラムが、4人体制ラストライブの気合なのか、交通トラブルジンクスのおかげか、どんどんキレッキレになっていく。この『七七日』は曲中の半分はドラムソロを叩いているかのような手数の多さだった。最初は馨くんの気合の演奏に影響された結果だと思うのだけど、今度はそれに合わせてリーダーの演奏までよりアグレッシブに変化していったのがとても印象的だった。


さて、ここで再びMCへ。今回のライブでは物販に「カシュー&ナッツ」のTシャツを今更発売という話題に。「そういや一時期"キス&したい”って名前になったよね」「ボーカルがキスで、あとみんなは死体って名前で」「カシュー&ナッツもボーカルがカシューであとはみんなナッツって名前だったんだよ。今は名前がちゃんとついたけど。」なんて無駄な情報も。あとは先日の大阪でのライブでの打ち上げの話。「馨くんと大阪に来るのは最後だから」と珍しく2次会にメンバーだけで行ったとき(ちなみにハマケンは「セリフ覚えなきゃ…」と不参加)、赤犬のリシュウさんのバー「マンティコア」にてリズム隊のふたりは「『慰安旅行』って難しいよね…」と話し合っていたこと(そのときリーダーは店で流れていた吉田栄作が紅白に出演したときの映像を見て爆笑していたらしい)を告白。「『ドラムだけどドラムっぽくなくパーカッションみたいに叩いて』って無理難題を言われたから『なんか違うな、辞めよっかな』って思ってた」とは伊藤名人の告白。そのとき酔っ払った馨くんは大地くんに向かって「ねえ!伊賀(航)*1さんって、いいの!?」とからんでいたそうな。「それは嫉妬?」「ノー嫉妬!」。「そしてもう一曲難しいねって言ってたのは、『ホニャララ』。」「なんでそのときに言ってくれないの?」「だって源くん、ローディーの子と恋バナ始めてて、そんな雰囲気じゃなかったんだもん…」ということがあったそうな。
そういう前フリがあって始まったのは『ホニャララ』。確かにリズム隊は複雑なことをしている。その中でもこの曲で2回だけ訪れる、ベースがチョッパーする瞬間が大好きだ。このときにはギターもテレキャスターシンラインに持ち替えてソリッドな音にチェンジしており、続けて『URAWA-City』へ。この曲の途中でギターだけがフレーズを弾き続け、あとの3人がテンポもリズムもメロディも自由演奏となるブロックが大好きだ。そして『Goodbye My Son』に続き、『Green Mocks』、『Hello-Po』と田中曲屈指のプログレナンバーが続く。昨年末のアルバムだけど最新作でこのような面白い曲が聴けたのに、今度田中馨作曲の新曲がSAKEROCKでは聴けなくなることにさみしさを感じてしまう。そして『KAGAYAKI』で「MUDA」パートは終了。
楽器をいつものセットに戻して始まったのは『Old Old York』。そういえば昨年は演奏してたけど最近は聞いていなかった曲で、以前はスキャット後にハマケンのネタコーナーがあってライブ定番曲となっていた曲。久しぶりの演奏も、なんだか「これで演奏納め」と聴こえてしまう。そして続いて演奏されたのは、『インストバンド』。このときにはすでに「すべての演奏に意味を持たせてしまう」病気にかかっていたために、4人の『インストバンド』はそれはそれは壮大に聴こえた。あーあ、なんか徐々に終わりが見えてきたなー、と感傷に浸っていたところで披露されたのは、なんとこれは本当に久しぶりの『殺すな』!ニクい!このライブの最後が見えてきたあたりにこの曲を持ってくるのはニクい!そして全員の演奏がすべてを出し切るかのように激しい。特に伊藤大地のドラムが、それはもうすべてをぶった切るような切れ味で、過去最高にかっこよかった。
演奏後、少しの間を持たせ、曲前にゆっくりとリーダーがタイトルを言って始まったのが、『サケロックのテーマ』。4人体制最後のライブに、『サケロックのテーマ』という、バンド名を冠した曲を演奏するというのは、これはどうしたって意味を持たせていると推測してしまうでしょう。ワンフレーズごと、大事に大事に演奏しているその姿を一生懸命見ながら、これまでのことを思い出していた。この曲は、今まで4回聞いたことがある。1年前に赤坂ブリッツで池田貴史を招いて演奏されたものと、2年前の「ねんまつのぐうぜん」1日目2日目野村卓史を迎えて演奏されたもの。これらはサポートで鍵盤が入り、さらにメロディーのキーも上がってリアレンジされたことで「Part2」と呼ばれていた。そして、一番古いのは2006年、まだ自分が上京する前に大阪のシャングリラで見た「赤犬vsSAKEROCK」のとき。このときの演奏は、音源に入っているとおり、田中名人もギターを演奏していたのを思い出す。そのときのライブではハマケンがちょうど25歳の誕生日だってことで、翌日のライブ会場である広島まで歩いて行ってください!と赤犬のみなさんから荷物でパンパンになったリュックサックを渡され、会場のみんなで花道を作って外まで送り出したなぁ。この曲を聴いて、今までのライブが急に走馬灯のごとく蘇ってきてしまい、泣きそうになってしまった。いや、正直、少し泣いた。あまりにも素晴らしい曲順だった。


いよいよライブはラストを迎える。ラストはもちろん「対決」をする『生活』。ここ数年、定番となっていたこの対決だが、今回のライブを持って封印するという。そのために悔いの残らないようにいつもより長めに対決は行われた。ちなみにここ最近の浜野さんは「鉄」というフレーズを使いがちだったために「今回『鉄』って言ったら馨くんじゃなくてハマケンがバンド辞めてね」と大地くんから宣告+観客から拍手をもらってしまうハメに。気合を入れるためにPAに「もっとオレの(モニターの)返しをくれ!もっと!もっとだ!もっと来い!」と叫ぶ浜野さんに、「あなたが戦うのはそっちじゃないよ!」ともっともなツッコミを入れるリーダー。そうして、最後の対決が幕が切られた。
さて、今回の対決、本当に長かった。えーと、印象に残ってるフレーズは…なんだっけなー。やっぱりぜんぜん思い出せない。なのでTwitterで検索してみてそうだったそうだったと思い返したのですが、「下敷きこすって静電気〜」「わきが!こっちはわきがじゃな〜い」「ほしいもの!カ、ル、テ〜」「生きるか、死ぬかの芸能界」「空洞です」「下着?裸?」って感じだったなー。途中にはまさかの「ま○こ…」とストレートにダメなフレーズをこぼしてしまい大ブーイングを受ける場面も。最終的にはまさかのももいろクローバーココ☆ナツ』のフレーズ「コココ コーコ コーコーコー」まで飛び出し10分ほど続いた対決にようやく終止符がついて『生活』へ。なんとなく…対決がこれで終わりでよかったかも、なんて思ってみた。


もちろんこれでライブが終了なわけがなく、アンコールへ。そこへ登場したのは…カシュー&ナッツTシャツを袖まくりして登場した星野…いや、ドラムのホシピー。「今日はカシュー&ナッツのラストライブへようこそ!」と、まさかのカシュー&ナッツライブがアンコールで!

ベースは伊藤大地…じゃなくてイトマン。ギターは田中馨…じゃなくてタナケイ。座ってでないとベースを弾けないイトマンは話を無視してベースを弾いてるし、タナケイはなぜかTシャツがビリビリに破れて登場。そしてボーカルのカシューが最後に登場してその日限りの新曲、という名のグダグダセッションを披露。「落っこちた!」というよくわからない歌詞を連呼するカシュー、「もっと速いテンポで弾いてよ」とホシピーに言われてアンプのつまみをいじりだして「機材のせいじゃない!」とツッコまれたり、突然チョッパーを始めるイトマン、黙々と変なフレーズを弾くタナケイ、それらをなんとかまとめようとするホシピー…。いやー、なんて無駄な時間!対決のときも思ったけど、感動的だったあの時間を返せ!と思わざるを得ない。そうして、なんだか終始グダグダのままカシュー&ナッツのラストライブは終わったのでした。


まぁ、もちろん、もちろんこれでライブが終了なわけがなく、ダブルアンコールへ。再びSAKEROCKの4人が登場し、一人ずつ挨拶。ハマケンは「今年は悲しいこともいっぱいあったけど、個人的にはいいこともいっぱいあったので来年はもっといい年になると思ってます。…馨くんは辞めちゃうけどね。来年からは違う形になりますけれど、よろしくお願いします」と、自分中心って感じのコメントがいかにもハマケンっぽかった。そして今回の主役の馨くんは「11年間、ありがとうございました。…ありがとう…ありがとうだなぁ。」「ハマケン、源くん、大地くん、11年間ありがとう。楽しかったです。」「来年からはサケロックのメンバーではないですけど、サケロックの面白いアイディアを出していこうとがんばっていこうと思います。」「サケロックもまだまだ面白くなると思うんで…楽しみにしてるぜ…!」と感謝と来年の決意を。
大地くんは「サケロックってバンドはドラムに無理難題を言うんです。それぞれ3人が作曲するんだけど、それぞれの無理難題の色があった。」「スタジオでドラムのフレーズをいつも試行錯誤しているんだけど、ライブ中にも思い浮かぶことがあって。その無理難題があったからこそドラマーとして得るものがたくさんあった。だから馨くんからもらったものはたくさんあった。」「来年から3人になるっていう実感がないんだけど、実感がないライブができてよかったです。」「誰も音楽を辞めるわけではないんで寂しくはないです。」と、実直な言葉を。そして最後に星野リーダーは「SAKEROCKというバンドは11年前に僕と野村卓史くんで始めて、最初はハマケンがいなくて。」「メンバーみんなバンドをやってて僕も芝居をやっててバンドっぽくなかった。バンドっぽさを排除した音楽集団のような感じだった」「でも今日の『殺すな』の演奏なんかを聴いてると、いつのまにかバンドになってたんだなぁって思った」「だから寂しいけれど悲しくはない。バンドから変な音楽をつくる集団に戻るだけだから」と、過去と未来についてを残した。そうして4人最後の演奏は『MUDA』で終わることとなった。会場みんなで歌いながら聴くこの曲は、明るく見送るお別れの歌のようだった。


「バンド」から「変な音楽をつくる集団」へ。
そういえばかつて星野リーダーは「ライブはあまり好きではない」なんてコメントをしていた時期があった。多分、わりと初期の頃だと思う。それはおそらく、当時はまだ「音楽集団」であるという意識が強く、バンド感を排除しようとしていた時期だったのかもしれない。それがいまや、あんなに楽しそうに、みんな笑顔でライブを行っている。最初は座って演奏していたギターやベースも、いまや立って頭を振るほどになっていた。その結果「MUDA」というアルバムが完成し、バンド感を排除しようとした結果、唯一無二のライブバンド感を手に入れていたのではないだろうか。
その「章」は今回で終了なのだ。第一章を野村卓史在籍時としたら、今回は第二章の幕が閉じ、来年からは第三章の幕が開くのだ。ライブは今後いったいどうなるんだろうか、と思っていたのだけど、何も心配することはない。「対決」も「カシュー&ナッツ」もこの章で終わらせ、SAKEROCKは次の章の幕を開こうとしている。次の章ではいったいどんな変なことしてくれるんだろうか。それが楽しみで仕方がない。




こちらこそ、ありがとうだなぁ。

*1:細野晴臣のバック、そして星野源ソロのバックでも演奏しているベーシスト