「Loser's Parade」

for さえない日々

ぐうぜんのきろく ファイナル/SAKEROCK

これはSAKEROCKの 2009年あたりから2011年までの 断片的な記録の集まり

今まで発売されてきたDVD「ぐうぜんのきろく」シリーズは、2005年からスタートしてこの4枚目で最終回を迎えました。これは昨年末に田中馨が脱退したために、「4人のSAKEROCKはこれで見納め」ということでこのシリーズを終えるということなのでしょう。今までのようにバカなことがふんだんに盛り込まれているDVDなのだけど、最後ということもあって、なんだかちょっぴり切ない気持ちになる。
監督のサンタさんも言っていましたが、「最後」というフィルターを通して見ると、すべてのことが偶然でありつつも必然であるような気がして、グッとくる。今回のDVDには副音声はついていないっていうのも、何かを物語っているかのよう*1。さらにデザイナーの大原さんのブログには「ぐうぜんのきろく」シリーズに対する思いが。SAKEROCKの映像作品がリリースされ始めてすでに7年近く経っていることに少々驚く。

ぐうぜんのきろくファイナル [DVD]ぐうぜんのきろくファイナル [DVD]
SAKEROCK

カクバリズム 2012-05-09
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まず1枚目。1枚目は日比谷野音のライブをほぼ収録されたもので、台風が迫る中、ライブ中だけ晴れた奇跡的な一日の記録。「ほぼ収録」と書いたのは、自分のレポートと比べると、『老夫婦』と『グリーンランド』が収録されていないことに気がついたから。
この映像を見ていると、台風の不安、セミの鳴き声、雨が上がった空、鈴虫の鳴き声、適度な小雨など、あのときの感覚が蘇ってくる。見応え充分なのですが、その中でもやはり目玉は最新曲にして4人での最後の曲『エメラルドミュージック』でしょう。キセル辻村兄(ライブの最後に星野リーダーが間違えて「辻村タケヒロ」って言っちゃってるの、当日は全然気が付かなかった)をこの1曲だけのために呼んで演奏されたこの曲は、間違いなく「MUDA以降のSAKEROCK」だった。
その他、「シャキーン!ループ」とか「マリンバウォーミングアップでマーティン・デニーのSAKE ROCK演奏」とか「久々の白スーツ」とか「『千のナイフ妖怪道中記』で伊藤名人がタンバリンを放り投げる瞬間」など素晴らしいシーンはたくさんあるのだけど、「『MUDA』演奏中、ハマケンにセミが突っ込む」シーンは収録されていなかった。カメラで撮れてなかったのかな。セミがいるシーンが何度も映ったので期待していたのだけど。なにせこのライブ、最前列で見ていたためにほぼ真正面でセミの特攻をくらっている浜野さんを間近でみることができたのでした。自分の記憶の中だけに留めておきます。
それにしてもこのライブのラスト、BGMが流れだすのですが…これってもしかして新曲?でもベースも聞こえる。何かのデモバージョン?ペンギンプルペイルパイルズのサントラにこんな曲があったような気もするし…いったいなんなんだろう。すごく気になる。

2枚目は、2009年から2011年の3年間の記録的映像集。おなじみホニャチンのアニメーションの後、いきなり『サケロックのテーマ』が始まる。しかも、2009年年末のキネマ倶楽部でサポートに元SAKEROCK野村卓史が参加する5人での演奏だ。これが収録されているのはすごく嬉しい!更にこのライブのハイライトである浜野感電シーンまでも。欲を言えばこの日の『生活』は浜野さんがスキャットのあと最初のメロディを吹けなくてみんなでずっこけたシーンとか、CD未収録曲『やわらかリーゼント』(ドラマ版「アキハバラ@DEEP」エンディングテーマ)を演奏しているシーンも入れてほしかった。
ねんまつのぐうぜん@東京キネマ倶楽部(2009/12/12)
ねんまつのぐうぜん@東京キネマ倶楽部(2009/12/13)
続くライブは2009年のフジロック。伊藤名人がハチに襲われてるシーンは最高に爆笑させていただいたが、このライブ前に一瞬挟まれる「山を生きる」。これに出演している坂田三吉役のOZMAこと桑原恵太は今年の3月末でエンターブレインファミ通を出版している会社でかつての山岸サンタの職場でもある)を退社。こちらも奇しくもお別れなのだ。
2010年の恵比寿リキッド「げんざいのぐうぜん」はサイトウジュン氏の後ろに大御所お笑い芸人の娘さんが映ってるのを確認しつつ、そういやこのときに「KAGAYAKI」が初披露されたんだったなー、などと振り返る。あと共演のoutside yoshinoことイースタンユースの吉野さんと星野リーダーの「たいやき」もよかった。というかoutside yoshinoがすっごく良かったんだっけ。
げんざいのぐうぜん@恵比寿リキッドルーム(2010/4/1)
下北沢インディーファンクラブのシェルターでの映像、2回目のライブが収録されてたけど、これがまさに自分が見れたライブ。当然見ようとしてたけど開演前にすでに入場規制がかかってしまい諦めていたところにTwitterで「今からなら見れる!」という情報をつかみ、慌てて下北沢の街を走ったのでした。この日のライブのテンションは今まで見た中で一番高かったっていうのは、映像でも伝わってくると思う。あの場にいた人たち全員が躁状態だった。あと、田中名人がクリスタルベースを使い始めたのがこのライブ。
下北沢インディーファンクラブ2010(2010/6/27)
そしてビルボードライブ東京で、『KAGAYAKI』を演奏していたらステージ後方のカーテンが開き、六本木の夜景が現れたシーン。この日は、星野リーダーが初めてテレキャスターシンラインを使用したライブで、『MUDA』と『Green Mocks』を初披露した日だった。そして1日2回公演だったんですよね。格式高いライブハウスでいつもと違う雰囲気で座席指定。だけど、演奏したのは激しい曲で、今までにない曲調にとてもワクワクした日だった。
ビルボードライブ東京(2010/10/30)
2010年年末のキネマ倶楽部は、RAGE AGAINST THE MACHINEの『Bombtrack』のリフで遊んだり、久々の『信長』を披露しているシーン。このへんからハマケンが垢抜けだしているのが分かりますね。だって、1年前のキネマのときはパンパンだった顔が、ちょっとシュッとしてる。そういやこの日は田中名人が『MUDA』をミスしまくってて落ち込んじゃって、「じゃあ最後にもう一回やろう!」ってなって、そこから『MUDA』をラストに演奏するっていうというのが定番になったのだった。
SAKEROCK “東京キネマ倶楽部” 祝10周年!!(2010/12/19)
赤坂ブリッツでは池ちゃんこと池田貴史登場に心底驚いたのを覚えている。MCが余計に長くなって大笑いしたり、「うちゃーん、ジャッキーれーす!」とか笑ったなぁ…。演奏については、収録されている『会社員』を見たら一目瞭然だと思いますが、奏者が変わるとこんなにも曲が変わるのか!と改めて当然のことを確認したり。『インストバンド』はやたらジャジーで、艶っぽくなっていたのが印象に残っている。
MUDA 発売記念ワンマンライブ@赤坂ブリッツ(2010/12/26)


ここからは明けて2011年。MUDAツアーが各地で回を重ねるごとに勢いが増していく様子が流されるのだけど、そのツアーは途中で中断を余儀なくされる。
東日本大震災
当日、星野リーダーは前乗りして札幌に、田中名人は帰省のため函館に。残りのメンバーと角張社長は東京にいたけど、機材とスタッフを乗せたフェリーが北海道を目指している途中だったんですよね。当日、星野リーダーがばかくんのTwitterアカウントを緊急で利用してスタッフと連絡を取っていたのを覚えています。翌日の北海道でのライブは延期を余儀なくされ、今後の対応についてメンバーとスタッフがハマケンの家に集まってミーティングを行う姿が収められていた。仙台出身である角張社長の思いなどとシリアスなシーンではあるが、結構えげつないジャンルのAVのパッケージが一瞬ぼんやり映っていたことは記録として書き留めておきたい。
そして結局延期となってしまった東京でのツアーファイナルの日、彼らは突如Ustreamでの配信を行った。そのときの告知はこんな感じだった。

そして配信されたUstreamは、震災後の不安を取り除いてくれるような、感動的ながらもバカバカしいものでした。「はやく元の生活に戻れるように」という意味を込めた『生活』の、閉塞感の打破はすごく覚えている。
SAKEROCK Ustreamアコースティックライブ@浜野宅(2011/3/21)
そんな状況から2ヶ月後に無事開催されたツアーファイナル渋谷AX。アンコール前に「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜インディーズの神に愛された男 角張渉(32)〜」というこの日限りの映像が流されて大爆笑だったあの日、映像はそれが終わってからのマンマミーアとシンバルキック。『MUDA』演奏中に現れた電飾MUDAのシーンと、その電飾MUDAが儚くも撤去・解体されるシーンを映している。そうそう、この日は最後に日比谷野音でのライブを発表して会場が歓喜しましたよね。

「MUDA」発売記念ツアー@渋谷AX(2011/5/20)


そして時間は、野音を経て、2011年の年末へ。田中馨脱退発表のくだりは省かれ、シーンは年末の東名阪ツアーに。この脱退という出来事に対してメンバーに悲壮感はなく、それすらも笑い飛ばそうとするかのようにライブを行っていく。そうじゃないと“バンドやめ夫”なんてあだ名、付けませんからね。それでも、これが最後のツアーだとばかりに集大成となるセットリストで挑むライブが歴史を刻んでいて感動的なのです。「インストバンドの唄」3人斉唱とか。
このDVDの最後に収められたのは、「12.26渋谷AX大会 SAKEROCK冬の一大事 〜眩しさの中に君がいた〜*2」と称するべき田中馨ラストライブ。衝撃的だった田中馨が歌い上げる『時代おくれ』、キラーチューン『殺すな』、そして4人での演奏が最後となる『サケロックのテーマ』。DISK2の冒頭と対になっているこの構成がなんだかとっても泣けた。
エンドロールも流れてこれで終わりかと思えば、そうではない。あの冬の一大事でもうひとつ終わりを迎えたのが、カシュー&ナッツ。こっちはバッチリ長めに収められちゃってるものだから、さっき流した涙の行き場所に困る。茶番の後、最後の最後はアンセムとなる『MUDA』の演奏をもって、4人のSAKEROCKが終わりを告げた。
さようなら!今年!SAKEROCKの暮れの元気なご挨拶ツアー@渋谷AX(2011/12/26)


今回のDVDはドキュメントではない。ただ、映像の断片を集めている。そんな“ぐうぜんのきろくたち”が、演出を省いているからこそ感動的に仕上がっている。そのときどきのことを振り返りながら、噛み締めるかのように堪能しました。
ずっとSAKEROCKが好きだった人たちはもちろん、SAKEROCKがどんなバンドなのか知りたい人にもおすすめしたいDVD。ちょっと迷ってるくらいならさっさと買いなさい!と強く言いたい。今までのDVDだって廃盤になっちゃってるから入手困難にすぐなっちゃうし。


それでは最後に。
B!!…? A!!…? L!! I!!  バリ!!!!  ^ v ^ *3

*1:単にメンバーが忙しかったから、という理由もあるかもしれませんが。

*2:ネタ元はもちろんももクロです。

*3:意味がわからない人はちゃんとDVDを買って何のことか確認したらいいさ