「Loser's Parade」

for さえない日々

ふくすけ@Bunkamuraシアターコクーン

毒々しくて絶望的なのに妙な爽快感がありました。
ふくすけ | 大人計画 OFFICIAL WEBSITE
公演概要&チケット情報 | ふくすけ | Bunkamura
今回の公演は1991年の初演、1998年の再演に続く14年ぶりの再々演。こんな壮大で混沌としていて、21世紀の今でも通用する…というか、21世紀だとリアルに近づいてしまっている話をすでに20年前の20代で書き上げていた松尾スズキに改めて感嘆。ちなみに初演時のふくすけ役は温水洋一だったそうです。
「ふくすけ」の初演も再演も見ていないのですが、いろんな媒体から得た知識で「救いがない」「放送禁止用語オンパレード」「悪意に満ちている」「不謹慎」などというイメージが付いて回っていた。そのため、どんな悲惨なことが待っていて、どれだけ後味の悪い観劇になるんだろうか、などと少し身構えていた。


しかし、実際に観劇後に感じたのは妙な爽快感だった。確かに物語の世界観はずっと暗く、人間の醜い部分が至るところに現れている。だけど、それをおどろおどろしく見せるのではなく、圧倒的な情報量を笑いを含めテンポよく見せられたからかもしれない。なんだか暴風雨にまみれた後のようだった。そして爽快感を一番感じることが出来たのは、ラストもラストのシーンでの古田新太。この芝居で古田新太は、日頃の獰猛で活発なイメージと真逆の、吃りがちでおとなしく、子供の頃にイジメられていた中年男性を演じている。なのでずっとパッとしない、うじうじしている印象。しかしラストですべてを掻っさらうかのようなシーンが待っていて、ここは否応なく「さすが!!」と古田新太の真骨頂を讃えざるを得なかった。超カッコよかった。
他の出演者だってもちろん素晴らしい。大竹しのぶは怖いくらいの憑依力だったし、多部ちゃんは「風俗嬢」役で際どいこともやりつつ天真爛漫この上なかった。オクイシュージは、個人的にはずっと「ユースケ・サンタマリアと一緒にコントしてた人*1」という印象だったのが、ようやく役者として認識できました。眼力がスゴいしダメ人間がハマってた。あと江本純子のルックスは途中まで誰だか分からなかったくらい。
大人計画勢は当然の安定感で、エキセントリックなふくすけ役は笑いと暗さを同時に表現できる阿部サダヲにしかできないと思う。あとエキストラ的な役にノゾエ征爾が率いる劇団はえぎわのメンバーが何人かいたのですが、再演ではノゾエさんがこのエキストラ的な役をこなしてたそうですね。


今回、奮発してS席で観劇したのですが、S席でよかった。あんなに間近で舞台上のエネルギーを感じることが出来た上に、客席に降りてくる箇所もあったので、1階通路横の座席は期待していいと思います。

*1:1990年代に「VIDEO JAM」とか「空気3000」って番組でやってたんですよ。