「Loser's Parade」

for さえない日々

収録全曲の、個人視点解説〜「SAKEROCKの季節 BEST 2000−2013」

何度も何度も聴いている「SAKEROCKの季節」。季節を振り返るたびに、そのときどきのことを思い出したり、または思いを巡らせたりしている日々です。その勝手な思い込みや他人に共感されにくい思い出を、ブログという個人視点が要となる場所で好き勝手ぶちまけてみたいと思います。こんなこと、公の場所で言ったとしても誰も興味を示してくれないですから。ブログもWEBという性質上、公の場所ではあるのだけど、開放している俺の家、みたいなものと解釈します。勝手に入ってきたあなたが悪い。

DISC-1-1.慰安旅行(DEMO ver) 〜CD-R「SAKEROCK

『慰安旅行』と言えばSAKEROCKで初めてできた曲と聞いています。しかもそのデモバージョンなわけだから、つまり「世界最古の曲」。もはや古典の域です。この曲は星野リーダーが初めてメロディが「降りてきた」もので、以降、ソロ曲『くだらないの中に』が「降りる」までそれを経験しておらず、処女作にして代表作と言っても過言ではないと思います。
4曲目にある『慰安旅行』とは違い、特にリーダーのコード使いや伊藤名人のドラムスタイルなどがまだあまり確立されておらず、確かに「若い!」と感じるのですが、それでもこの曲を録音したのは彼らが20歳前後だということを考えると、あまりに早熟な印象。随所で笑い声や話し声なんかが挟み込まれているのも、おそらく何らかのギミックを狙ったものなんだと思うけど、とにかくやりたいアイディアがあふれていたんだな、と感じます。

DISC-1-2.モズレア 〜CD-R「SAKEROCK」、ミニアルバム「YUTA(renewal)」

この曲は「YUTA」の再発盤にも収録されているもので、それまではこのアルバムで聴けるものが最古曲でした。いまや再発盤「YUTA」も生産終了となってしまって入手が難しくなっているようですが。

それにしても改めて聴くと、これを20歳前半のバンドの音だとにわかに信じがたいくらい。今だから言いますが、SAKEROCKを好きになった20代中盤の頃は、まだ「YUTA」の良さがわかりませんでした。でも、30を越えて改めて聴き直すと、ようやくしっくり。耳が育ったのか、年齢が関係あるのか。反対にサケの皆様は近年ではディストーションギターを導入してって、逆行しているのがなんだか面白いです。

DISC-1-3.OTOOTOOTO-SAN 〜ミニアルバム「YUTA」

このベスト内で唯一の野村卓史作曲作品。ちなみに漢字で書くと『弟義父さん』。野村作品は他に『チャイニーズ・スケーター』という、今はグッドラックヘイワでも彼が演奏している曲がありますね(デモCD-Rには他にもあったのかもしれませんが)。改めて聴くと、後のグッドラックヘイワに通ずるようなテイストが随所に見え隠れするし、細野晴臣経由のエキゾチカ的異国感が一番あふれていますね。

DISC-1-4.慰安旅行 〜ミニアルバム「慰安旅行」

野村卓史が脱退し、ハマケンが正式加入してできた編成で正式に録音され、音源化された『慰安旅行』。ここからはバンド感が強くなっていきます。おそらくこの曲名は細野晴臣の『泰安洋行』をもじったものだと思うのですが、こっちのバージョンの方が賑やかで雑多な感じが『泰安洋行』っぽい。編曲も大きく変わり、特に途中の展開がプラスされたことでより勢いがついた印象です。この曲はSAKEROCKの代表作であると先に書きましたが、初の民放生放送出演となった「アパッチナイトフジ」でも披露され、途中に当時亡くなったばかりだった植木等に敬意を込めて『スーダラ節』のフレーズを挟み込んでいましたね。そしてしばらくは追悼バージョンで演奏され続けました。
個人的な思い出で言うと、まだ「ぐうぜんのきろく」も発売されておらず、YOUTUBEなんてまだ一般的じゃなくてSAKEROCKのライブが簡単に見られなかった地方在住時代。「どうやらグループ魂のライブDVDSAKEROCKのライブが収録されているらしい」という情報を頼りに購入して視聴してみたら宮崎吐夢のバックバンドで、ライブ映像はもとより吐夢さんの圧倒的パフォーマンスに爆笑していました。しかし、そこで披露された『慰安旅行』での伊藤名人のドラムに圧倒され、更にのめり込むきっかけとなったのでした。

DISC-1-5.穴を掘る 〜アルバム「LIFE CYCLE」

星野ソロでもおなじみ『穴を掘る』。SAKEROCKバージョンの音源には森山未來が「タップ音」として参加しています。この曲自体は実はSAKEや星野ソロ以外にもバージョンがあって、例えば星野リーダーが当時児玉奈央と組んでいたユニット「Polyp」として参加したコンピレーションアルバム「The Many Moods of Smiley Smile」にはPolypバージョンが収録されていて、リクオの「セツナグルーヴ」には『穴を掘る』のカバーが収録されている(リクオがこの曲をカバーした経緯はこちらから。元ページが消えちゃっててキャッシュだけど)。

この曲の思い出といえば、やはり「やっぱ好っきゃね〜ん!」でしょう。「songs of instrumental」発売ツアーの際に突如思いつきで始まった、この曲のエンディングにやしきたかじんの「やっぱ好きやねん」を入れこむという荒業。この変遷は「ぐうぜんのきろく2」にも収録されていますが、当時「フォー・フレッシュメンツアー」を博多百年蔵に見に行ったときのことを思い出します。たかじんが亡くなった今、もう一度聴きたいバージョン。

DISC-1-6.生活 〜アルバム「LIFE CYCLE」

LIFE CYCLE」は自分が初めて購入したアルバムだからこそすごく思い入れがあって、おかげで『穴を掘る』の後に『生活』のハマケンのアレが来るのがものすごく違和感を感じてしまいます。この曲、「LIFE CYCLE」の1曲目に入ってるのですが、ボーナストラックとして「うまうまくん言い訳バージョン」という、ハマケンが『生活』をバックにひたすら演奏の解説(スキャットを)をしているものが収録されています。あのパンチライン「盛〜りか〜えそ〜とい〜う気持ちがまったくないっ!」はときおり口ずさみたくなります。ちなみに、ライブで演奏する場合はだいたいラストでしたね。
元々この曲は大人計画本公演「イケニエの人」のオープニングテーマだったもので、松尾スズキによる歌詞も別にあり、それはDVD「大人計画フェスティバル」阿部サダヲをボーカルに迎えた形で披露されたものが収録されています。この曲も、星野曲の真骨頂といえる転調がとっても気持ちいいです。

DISC-1-7.Old Old York 〜アルバム「LIFE CYCLE」

いったい何拍子!?ってなるくらいの変拍子曲なのに、難解に聴こえないポップさの要因は、星野作の人懐っこいメロディと、いとも簡単にこなしてしまうリズム隊の二人の功績なのでしょうか。この曲、ライブでは途中にハマケンのネタコーナーがあり、毎回一人コントをやってはウケたりブーイングを受けたりと浜野さんの精神的負担がかなりかかる曲でした。「滝川クリステルですっ」とか懐かしいなー。
音源に入っているバージョンも凝っていて、ハマケンのネタが入る場面では構成を変えてフレーズをループさせつつオーバーダビングしてみたり、前半がアコギ&ウッドベースだったのが後半ではエレキギター&ベースになっています。

DISC-1-8.殺すな 〜アルバム「LIFE CYCLE」

SAKEROCKを知るきっかけとなった1曲。このPVがスペースシャワーTVで流れていたのを見て衝撃を受けたのでした。「なんだこのクソカッコイイ曲は!」「なんだこの意味の分からないPVは!」「なんだこの奇妙な生き物は!」(ハマケンのことです)。後日、当時放映されていた「タイガー&ドラゴン」の林屋亭どんつくとこのバンドのギターが同一人物であることを知り、また衝撃を受けたのでした。「え!この地味な人が大人計画なの!こっちの奇妙な生き物の方じゃなくて!」(ハマケンのことです)。
この曲は全員の演奏が素晴らしくて、ギターのバッキングもいいし、ベースのうねうねもいいし、トロンボーンオクターブ重ねることで厚みが出ている上に最後のハイトーンも「殺すな!」って言って殺しにかかっている感じだし、なによりドラムが超絶。2分ちょいの曲だからこそ本当にあっという間。

DISC-1-9.エンディング 〜サントラ「『キャッチボール屋』オリジナルサウンドトラック」

田中馨曲には2つの要素があって、ひとつは『トロピカル道中』や『Hello-Põ』に代表される、変拍子だったり奇妙なメロディなどのストレンジな雰囲気を醸し出すものと、もうひとつは『GREEN LAND』や『桜の花子』に現れるドラマティックな雰囲気を醸し出すもの。この曲は、サントラであることも意識されてなのか、珍しくドラマティックに振り切っている曲で、とても希望に満ちたエンディングテーマになっています。ちなみにこの曲で初めてSAKEROCKの4人がコーラスを入れたそうです。
映画「キャッチーボール屋」と言えば、広島に住んでる時。舞台挨拶でハマケンが来るって言うんで横川シネマまで見に行ったなー

DISC-1-10.インストバンドの唄 〜アルバム「songs of instrumental」

ハナレグミこと永積タカシがボーカルを取る「songs of instrumental」のタイトル曲とも言える曲。この曲といえば、注目されるのはやはり歌詞。ここで星野源の言語感覚というか、文章能力に驚きました。「手足のない人や 目と耳が動かない人は どんな風に踊ればいいの」ですから。昔、Quick Japanで星野リーダーが持っていた連載のタイトルは「植物人間でも踊れる音楽」で、これは確か、SAKEROCK結成当初のコンセプト的なワードでもあったと記憶しているのですが、それを反映させたような歌詞です。
この曲といえばやはり思い出されるのは2012年秋のカクバリズム10周年イベントでのライブ。サポートメンバーを入れたライブをひと通り終えた後、メンバー3人だけで演奏されたこの曲にはいたく感動したものです。

DISC-1-11.ラディカル・ホリデー 〜アルバム「songs of instrumental」

いわく、「ギターを担当しながらもギターがあまり好きではない人が作った、ギターが主役の曲」。当時、この曲が好きすぎて必死に耳コピをしたのを覚えています。今でもなんちゃってでたまに弾いてみては、「あー、やっぱりちゃんと弾けないな」と思うばかり。成長してません。
ちなみにこの曲、数年後に突然テンポを落として『電車』というタイトルに変えて演奏されていた時期がありました。その後、確かまた元に戻ったんでしたっけ。

DISC-1-12.インストバンド 〜アルバム「songs of instrumental」

インストバンドの唄』と対になる曲で、アルバムの一曲目で「どんな風に唄えばいいの?」という問いに対する回答がこの曲であると解釈しています。これはスペシャで放送されていた「スペシャボーイズ」という、ユアソンのジュンさんとハマケンがMCをしていた番組で初めてPVが流れて、いたく感動したのを覚えています。ウィスット・ポンニミット(タムくん)作のこのPVはその後、糸井重里の目にも触れて「ほぼ日」で特集が組まれました
とても壮大な曲で、元メンバーである野村卓史によるピアノとピアニカが拍車をかけるし、最後にトロンボーンがちょっとルーズになるところが、インストバンドが歌っている!っていう感じがして感動的。そして野村卓史を迎えた上で、オリジナルメンバーで『インストバンド』というタイトルの曲を演奏するっていうストーリーが美しすぎます。必然的すぎる。

DISC-1-13.進化 〜サントラ「おじいさん先生 オリジナルサウンドトラック」

深夜ドラマ「おじいさん先生」。大人計画が企画して、細川徹脚本、大宮エリー演出、ピエール瀧が主役という要素が多すぎる深夜ドラマのサントラで、ハマケン作曲。このあたりからハマケンが“第3の作曲者"として頭角を現しだします。ハマケンの曲は他の二人とはまた違って、ちょっと間の抜けた感じというか、朗らかなのが印象としてあります。それはトロンボーン奏者が作った曲をトロンボーンで演奏しているから、ということもあるのでしょうか。

DISC-1-14.おじいさん先生 〜サントラ「おじいさん先生 オリジナルサウンドトラック」

同じく「おじいさん先生」のエンディングテーマで、牧歌的なメロディと演奏にシュールな歌詞が乗っかることで発生するストレンジ具合がたまらないですね。一聴するととってもいい曲なのに、「入れ歯の樹」って一体何なんだ。余談ですが、「おじいさん先生」エンディングテーマのもう一つ候補だったのが『老夫婦』だったそうです。
この曲を聴くと思い出すのは2007年のねんまつのぐうぜん@キネマ倶楽部。2日目のアンコールでは自由の森学園高校の生徒が登場し、『おじいさん先生の合唱』が披露されたことです。このときのライブにはその直前に、自分にとっては生涯忘れることの出来ない事件が起こったこともあり、ものすごく印象に残っています。

DISC-1-15.会社員 〜アルバム「ホニャララ」

バナナマンライブ「SPICY FLOWER」のオープニングテーマが元曲で、バナナマンへの曲提供はここから始まりました。
この曲から星野リーダーがマリンバをライブでも披露するようになりました。マリンバの高速フレーズが好きで、思わず小さな木琴を購入して叩けるようになりました。あと、今はこの曲といえば日村さんの歌を思い出してしまう人も多いのでは?

DISC-1-16.今の私 〜アルバム「ホニャララ」

田中ドラマティック馨による感動曲。Aメロから徐々に盛り上がっていく感じ、そしてサビの希望が見えるようなメロディ、ストリングスが盛り上げる展開部分、そして再び静かに終わるこの構成が見事すぎる。イントロとアウトロはほとんど同じなのに、アウトロの方がなんだかちょっと前向きになってる印象を受けるのは、PVの影響なのだろうか。

DISC-1-17.ホニャララ 〜アルバム「ホニャララ」

『ホニャララ』というタイトルは、当時「未来講師めぐる」で共演していた深田恭子が発していた言葉が印象に残っていたからだそうで。あと、この曲もバナナマン傑作選ライブ 「BANANAMAN KICK」のオープニングテーマが元ネタです。
この曲のポイントは、田中名人による一瞬入るチョッパー(スラップ奏法)。2箇所に入るこの瞬間をライブで見るのが好きでした。そしてもう一つのライブでの見どころは、ブレイク後の高速テンポ。バカみたいに早くしていくのが好きでした。

DISC-1-18.MUDA 〜アルバム「MUDA」

初めて聴いた時は「SAKEROCKの新境地が来た!」と驚いた曲。リーダーが今までのギブソンES-125からフェンダーテレキャスターシンラインに持ち替え、音を歪まる上に、ブリッジミュートで刻んでいて、SAKEROCKに新たな展開を見せた曲でした。4人による「あ〜あーあああ〜あ〜あ〜」っていう、ちょっと間の抜けたコーラスもいいんですよね。ライブで思わずバカ面で一緒に歌ってしまいます。

DISC-1-19.8.16 〜アルバム「MUDA」

この曲名はたしか「8月16日に録音したから」って言ってた気がします。田中馨、最後のドラマティック曲。前作「ホニャララ」の『灰空』に次ぐ、壮大で緊張感のある曲で、今となっては物語の終焉を表すにはなんてぴったりなんだろう、と思います。

DISC-1-20.Emerald Music 〜新録曲(ただしバナナマンDVD「bananaman live emerald music」にオープニング曲として、DVD「ぐうぜんのきろくファイナル」にライブ映像が収録)

現時点でSAKEROCKの最新曲。バナナマンのオープニングテーマとして提供したものはSAKEROCK4人体制最後の音源となり、今回でSAKEROCK3人体制最初の音源となりました。


すでにライブで披露された曲ではありますが、改めて思うのは、『MUDA』や星野ソロの近年の傾向を踏まえた結晶だなあ、ということ。解禁されたディストーションギター、そしてフィードバックノイズと共に、よりポップにハードになった曲調。そして畳み掛けるストリングスアレンジ。第3シーズンの幕開けとなるべき曲です。ちなみにギターには辻村兄も参加しているのですが、コードジャカジャカ弾いてる方なのかパワーコードをブリッジミュートして弾いてる方なのかどっちなんでしょうか。ライブではジャカジャカギターは辻村兄の役だったのですが、それは星野リーダーがマリンバに徹底しているからですよね。んで、PVを見るとテレキャスター・シンラインはフィードバックさせたりブリッジミュートしてる方なんですよね。リーダーっぽい弾き方なのはジャカジャカの方なんですが、いったいどうなんでしょうか。辻村兄のブリッジミュートっていうのも珍しいですが、この人は学生時代メタル聴いてたからこういう奏法って実は得意分野だったりするんですよね。

DISC-2-1. 間仲間 〜コンピ「日本の態度」、コンピ「休日音楽 -DISCOVER JAPAN-」

「日本らしさとは?」をコンセプトに企画されたコンピレーションアルバム「日本の態度」の最後に収録された曲で、こっそりSAKEROCKはこのアルバムでメジャーデビュー(ユニバーサルミュージック)しています。ちなみに、後になぜかソニーから出たコンピ「休日音楽」(「Weeklyぴあ」とのコラボ企画だったそうで。そういや昔、ぴあにbonobosと一緒に取材受けてましたね)というアルバムにも収録されているのですが、このことについては公式からまったくお知らせがありませんでした。大人の事情的なことなのでしょうか。

ブックレットの本人解説にもありますが、この曲は下北沢のhttp://334578.sub.jp/:title3=ノアルイズ・レコードというレコード店にて一発録りされたものの上、カセットテープで録音されたため、すごく古い時代の音楽のように聴こえます。この曲のポイントとしては、星野曲の特徴とも言えるコード使い。あの経過音というかクリシェっていうのか、専門用語はわからないですが、構成の繋ぎとしてよく用いられる、階段を一段ずつ小走りで登るように演奏される箇所がありますよね。ソロ曲でも時折ちらつかせますが、この曲でも多く見受けられ、後半部分なんかは本編は転調していないのに、ここだけ転調するっていう小気味いいポイントがツボです。ちなみに、ライブでは2007年末のキネマ倶楽部で演奏されたのを見た記憶があります。

DISC-2-2. Matakitene 〜コンピ「日本の態度」

同じコンピアルバムで、ボーカルに宮崎吐夢を迎えた怪曲。のちに「LIFE CYCLE」ではインストバージョンとしてリメイクされましたが、このときも途中でハマケンが暴走して『京都』を歌い出すよくわからない構成になってます。ちなみに「日本の態度」には宮崎吐夢が日系アメリカ人“ハロルド”役としてコントが収録されています。あ、ちなみにドランクドラゴンのコントも収録されています。

先ほど星野曲の特徴で「経過音」「クリシェ」というキーワードを出しましたが、もう一つの特徴といえば後半の「転調」です。これが繰り出されることで日本人的カタルシスというか、すっきりするのは、昨年Eテレで放送されていた「亀田音楽専門学校」の「アゲアゲの転調術」の回で亀田誠治が語るところの「J-POP王道のテクニック」だからなのでしょうか。星野自身が公言しているJ-POP好きだった過去が、ジャズテイストの中に自然に流れ込んでいるからこそ特徴になっているのかもしれません。とにかく、後半の盛り上がりがいいですよね。吐夢さんの唄や歌詞、そして夢オチには笑わされてしまいますが。

DISC-2-3. いかれた Baby 〜トリビュート「SWEET DREAMS for fishmans

フィッシュマンズのトリビュートアルバムに収録されたもので、フィッシュマンズの名曲、『いかれたBaby』をカバー。

更に構成には「AメロBメロでギターのチューニングが違う」という、一聴して気づかない仕掛けや、途中で『MAGIC LOVE』のフレーズを挟み込んでいます。ギミックがいっぱい。

この曲についてはかつてスペースシャワーTVの番組に出た河原雅彦が「この曲がいい」って絶賛していたのを覚えています。たしかいとうせいこうがMCだった曜日の「OXALA!」だったっけ。

DISC-2-4. 七拍酒 〜アルバム「トロピカル道中」/サケロックオールズターズ

大人計画内で宮藤官九郎が中心となって公演している「ウーマンリブ」シリーズの第9弾「七人の恋人」のオープニングテーマのリニューアル版。この芝居は後にDVD化されていてそれで見ていたのですが、公演では星野源宮藤官九郎三宅弘城ツインギター&ドラムというスリーピースで演奏されていました。「ZAZEN BOYSっぽい感じ」という宮藤からの依頼を受けて作ったために変拍子(公演名に掛けて7拍子)のリフが大きくフィーチャーされています。こっちのバージョンは『七拍酒』と違ってスマートでまたカッコイイ。これはこれで音源化してほしいのですが。
伊藤名人とASA-CHANGによるツインドラムが豪快でかっこいい曲で、途中には林立夫リスペクトとして大瀧詠一の『ロックン・ロール・マーチ』のフレーズが挿入されています。こうして、リスペクトとして曲中に入れ込むのアイディアは、分かる人にとってはとっても嬉しい仕掛けです。

DISC-2-5. PomPom 蒸気 〜アルバム「トロピカル道中」/サケロックオールズターズ

細野晴臣のカバー。まさか後に伊藤名人が本人のバックバンドとしてこの曲を漣さんと共に演奏することになるとは思っていませんでした。下の映像はシャイネスボーイなので違うけど。

ASA-CHANGとの交流はこのあたりから活発になっていって、例えばハマケンが「ASA-CHANG & ブルーハッツ」のメンバーになったり、星野リーダーがASA-CHANG&巡礼の曲(というかスカパラ時代の曲)に詞を提供したり。あと、星野リーダーの歌声(というかコーラスですが)がSAKEROCK関連のCDに収録されたのって、この曲が初めてじゃないでしょうか。アルバム「トロピカル道中」では、ボーナストラックの『浜野隊長のレコーディング終了の祝辞』にてハマケンテンションめちゃくちゃボーカルバージョンも聴けます。

DISC-2-6. YAWARAKA-REGENT 〜新録曲(ドラマ版「アキハバラ@DEEP」エンディング曲、ドラマDVDには収録)

待ってました音源化!のこの曲。2006年、TBSで放送された深夜ドラマ「アキハバラ@DEEP」のエンディングテーマで、ドラマのサントラを手がけた(既発曲ばかりだったけど)TUCKERを迎えた『YAWARAKA-REGENT』。曲名の由来は、当時のハマケンの髪型からですね。

とにかくこの曲は、ドラマも好きだったっていうのもありますが、ちゃんと聴けることを待ちわびていました。たしか、TUCKERと一緒にライブで演奏したのは「げんざいのぐうぜんvol.2」の一回きりだったんじゃないでしょうか。ドラマへの思い入れもあって、どんどん神格化するほどになっていました。何年か前の「ねんまつのぐうぜん」で演奏された時は感動したなー。

DISC-2-7. エイトメロディーズ 〜アルバム「songs of instrumental」

任天堂が出した不朽の名作「MOTHER」のBGMカバー。オープニングテーマである『Mother Earth』と、このゲームの要となる曲『Eight Melodies』を合体させた構成。

自分が初めてSAKEROCKのライブに行ったのは2006年の1月初頭で、当時住んでいた京都のMETROでのライブだったのですが、そこでこの曲が披露されてひどく興奮したのを今でも覚えています。「マジか!MOTHERじゃないか!」と。「さすが同世代!これは反則!」と。今までやってきたゲームで一番好きなのが「MOTHER」だった自分にとって、SAKEROCKにここまでのめり込む結果となるきっかけの一つだったと思います。その後もしばらくはこの曲はライブレパートリーの常連となっていましたが、演奏されるたびにトロンボーンソロパートをドキドキしながら見守っていました。「音、外さないように」って。たいてい外してましたが。

DISC-2-8. スーダラ節  〜アルバム「songs of instrumental」

ご存知、ハナ肇とクレージーキャッツのカバー。こんな陽気な曲が、ここまで変化する衝撃ったら。

この曲も先ほどの初めて見に行ったライブのセットリストにあって、この時は対バンだった湯川潮音をボーカルに迎えて、更にリーダーも2番を唄う形で披露されていました。だから、最初からSAKEROCKに対しては「純粋なインストバンドではない」という印象がありました。ふざけたスキャットするわ、ネタコーナーがあるわ、歌い出すわで。そういえばもしかしたら今の10代の子なんていうのは元ネタを知らないのかもしれないですね。クレージーキャッツ星野源を語る上で重要なキーワードなので、知っておくべき。

DISC-2-9. 日本の人 〜トリビュート「細野晴臣トリビュートアルバム -Tribute to Haruomi Hosono-」

細野晴臣忌野清志郎坂本冬美のユニット「H.I.S」のカバーで、坂本冬美役には寺尾紗穂がキャスティング。この曲って、昔、ツムラかなんかのCMソングになっていませんでしたっけ?「所さんのただものではない!」を見ていたら流れていたような気がするのだけど記憶違いだろうか。佐川急便のCMソングにもなってましたが、それよりも前に。

アルバムで細野さんのカバーをしたら、本家のトリビュート企画に呼ばれて再集結したサケロックオールズターズ。ここではガッツリ星野リーダーが歌っていて、前年に出した「ばらばら」を持って弾き語りライブを活発化させ、いよいよシンガーとしての才能を世間に発揮しだしたころの作品です。これを細野晴臣トリビュート野音ライブで見れたのはいい思い出。

DISC-2-10. 千のナイフ妖怪道中記 〜アルバム「ホニャララ」

坂本龍一、またはYMOの『千のナイフ』と、ナムコのゲーム「妖怪道中記」のBGMをマッシュアップ

このアイディアにはビックリしました。もちろんどちらも単独で知っていたのですが、まさかこの曲が結びつくだなんて全く思いもよりませんでした。あとで調べたら「妖怪道中記」の曲が「千のナイフ」を参考にしているらしい、という噂を知りました。フィッシュマンズのカバーでもそうでしたが、こうしたマッシュアップやちょっとした仕掛けや気付きを作るのが本当にうまくて面白い。もっとカバーやってほしいです。あ、あと、この曲はライブで伊藤名人が途中、スティックからタンバリンに持ち替え、そのタンバリンを投げ捨ててスティックを再び手にするっていう一連の流れがとても好きです。タンバリンでシンバルを叩くっていう発想がなかったのでビックリしました。

DISC-2-11. 七七日 〜コンピ「極東最前線2」

この曲自体は「YUTA」に収録されているのですが、現在のライブアレンジと大きく異なったために、eastern youthのコンピレーションアルバム参加の際に新録された曲。ちなみに「極東最前線」というのはeastern youthが主催しているライブイベントで、2004年2月にSAKEROCKが出演したことがきっかけで知名度が上がったそうな。また、それまで「癒し系」と言われがちだったSAKEROCKの音楽をeastern youth吉野さんが「サケロックはオルナネイティブだ」と評したことで、星野リーダーは「ようやく理解者が現れた!」と感激し、今までの交流に至ります。吉野さんと星野リーダーの共作『たいやき』もここからの縁。

この曲が流れると自然と「トトンガトン!」の手拍子をしたくなります。「YUTA」収録バージョンには手拍子も入っているのですが、前半と後半で手拍子の拍が入れ替わるという、またここでもひねくれたアイディアを披露しているのですが、これを実際のライブでやってみるのだけど、周りはそんな密かなチャレンジについて知らないので、一人で勝手に拍子を間違えている風に映ってしまってなかなか恥ずかしい、っていうしょうもないことを思い出しました。初期サケでとても好きな曲で、ライブアレンジバージョンの音源化を待ち望んでいたので、リリースされた時は浴びるほど聴いてました。

DISC-2-12. Rosenkranz 〜トリビュート「More SQ」

トリを務めるのは、スクウェアがプレステで出した「サガフロンティア2」のBGMカバー。

このゲームはやっていなかったので元ネタを知らなかったのですが、さすがサガシリーズ。壮大な曲でした。あと、この曲についてはわりと忠実に再現しているからこそ、今度は原曲の良さが際立ちます。後半のトロンボーンの伸びが気持ちいいです。



個人視点からの全曲解説をしてみたら、やけに時間がかかってしまった。そうこうしているうちに、いよいよ明日は星野源の武道館ライブ(リベンジ!)だ。