「Loser's Parade」

for さえない日々

バンド

昔から音楽に非常に興味があった。そのきっかけを作ってくれたのは中学のとき。担任が音楽の教員で、非常に音楽に関して情熱を持っていた人だった。家には300種類以上の楽器がそろい、「みんなのうた」に楽曲を提供していたり、噂ではサザンオールスターズのバックを勤めた経験があると聞いたことがあった。その先生が音楽の時間に「バンドを組む経験をしよう」といい、ドラム、ギター、ベース、キーボードをみんなで触ることとなった。今となったら、これが直接的なきっかけだったのかもしれない。翌年、カシオペア好きを公言する、ちょっとマニアックなヤツにそそのかされ、ギターを購入した。できるわけもないカシオペアのコピーをやろうとし、あっけなく断念した。そこから主にコードだけをひたすら練習した。thee michelle gun elephantのデビュー曲「世界の終わり」を聞き、「ソロがなくてもかっこいいんだ!」と感激し、アベフトシばりのカッティングをマスターしようとした。高校に入ると、オリジナルソング部という、いわゆる軽音楽部もあったが、なぜか入らなかった。でも結構出入りはしていた。部員と間違われるくらい。憧れだけは人一倍あった。
そしていよいよ大学。ついにバンドサークルに入部し、バンドを組むこととなった。ひたすら楽しかった。そして2回生にはいよいよメインバンドを組み、ライブハウスでも活動していくようになった。評判は上々で、気に入ってくれるお客さんも結構いた。先輩の紹介もあり、結構有名なバンドと対バンができたり、大きなイベントにも呼んでくれた。CDも作り、オーディションに送ったらメジャーレーベルから返事が来た。東京でレコーディングをすることにもなり、実際六本木でレコーディングをした。でも結局はボロボロの音源ができ、形にはならなかった。
正直、こんなに上手くいくとは思っていなかったので、不安があった。そして東京ではっきりと自覚した。
「オレには才能がない。」
周りのメンバーは、自分で言うのもなんだか、なのだが、才能あふれる人たちばかりだった。独特の文学的歌詞を書き、膨大な洋楽知識を集約したメロディセンスを持つボーカル。他人がまったく思いつかないラインを生み出すベース。そんなに無理しなくても、と思うくらい限界まで通常のビートをたたかないひねくれたドラム。その中でオレは普通のギター弾くしかなかった。何も思いつかなかったのだ。自分も膨大な音楽の知識を持っており、それなりの音源チョイスのセンスを持っていたと自負していた。しかし、何もできなかった。結成当初は自分だけが楽器経験者で他のメンバーは初心者だったため、よくリードしていた。しかし、他のメンバーはめきめきと上達していく中、自分だけ何も変わらなかった。腕は上達しても、これ以上、センスが磨かれることはなかった。
一応今年の頭までは活動していたのだが、就職してしまった自分と、フリーターになり、音楽の道を目指すと腹をくくったメンバーとの間に、やはり壁ができてしまった。自分も就職している自分に負い目を感じていた。だから、辞めた。それが今年の頭。
今、他のメンバーは別バンドで活動している。それはとても目を見張るもので、そろそろ世に名前が出るかも、というヤツもいる。
最近それが負い目となっており、サークルの奴らと遊ぶのが怖い。逃げてしまった人間だからだ。
でも、音楽をまったくあきらめたわけではない。やっぱりもう一度やりたい。バンドはやはり楽しいものだから。
まぁ、何が言いたいのかっていうと、音楽、したいなぁ、ってこと。マックやMTRでも買って、自作しようかなぁと。これが今の夢だ。そのために今、働いている。