「Loser's Parade」

for さえない日々

グッドラックヘイワ×ASA-CHANG & 巡礼ダブルレコ発『グッドラック巡礼』@渋谷O-nest

「“グッドラック巡礼”って、なんかさよならーって感じだね。巡礼バイバーイ、って感じで。」(ASA-CHANG


渋谷O-nestはそんなに行ったことはないのですが、会場は今まで見たことないくらい混雑。チケット完売だったそうです。受付へは狭いエスカレーター2台でしか行くことができないため、開園時間を過ぎても列が捌ききれず。結局は10分押しで始まりました。
グッドラックヘイワは見るのは久しぶり。新譜を聞いてかなりシンセでピコピコになってたのにビックリしたぐらいに久しぶり。しょっぱなにリズムマシンが鳴り演奏されたのはアルバムから『Ody Perc Tone』。音源ではピアノ音だったメロディーも全部シンセ。そうか、すっかりシンセ使いに様変わりにしてしまったのか、と思った矢先、『Fiesta Piano』でシンセで音源を出して生演奏に入ろうとして…野村氏入れず。グダグダになって「すいません!もう一度やります!」。「こんだけ機械を並べてたら機械が好きだって思われるだろうにね」「実際はビデオの録画もできません」「機械に泳がされてます」「ピアノ一本のときのほうがよかったなー。今は緊張しちゃう。」というなんだか初々しい発言のふたり。全然様変わりしてませんでした。まだまだ未完成な演奏スタイルのまま、『黒ダイヤ定食』。新作からの曲はとにかく音源と違い、出たばかりなのにライブ版のアレンジが多い。「それではおなじみの曲を」と言って始まったのはファーストから『PENGUIN&CAMEL』。ここでシンセから解き放たれて非常に安定した演奏に。おかげでこっちの「大丈夫?」というドキドキ感から解放されました。続けざまにここで『TIKOKU』。いつもは終盤に持ってくるこの曲が中盤に入ってくるとかなり新鮮。MCではレコーデョング秘話(主に河口湖付近のうどん屋の話)を披露し、そのままの勢いで新譜の中で最も勢いがある『麒麟坊』へ…と思ったら、またも野村氏ミスり、やり直し。完全に機械に弄ばれてます。今回出たアルバムの中で一番気に入っている『麒麟坊』、音源を聞くとベース音がなくてライブで聴いたら結構薄い音になっちゃうんじゃないだろうか、なんてちょっと心配をしていたのですが、ライブアレンジではベース音も演奏していて全然軽くなかったです。しかしグッドラックヘイワの音楽にこうしていろんな音が交わってくるのは新鮮。でも“らしさ”が失われないのは、エマーソン北村氏の言葉を引用すると「基本ピアニスト」だから「エレクトロニックな音が、ちゃんと手で弾いてる通りに聴こえる」からなのでしょう。演奏終了後、前作に続いてレコーデョングに参加した、同じ高校の先輩である曽我大穂が登場し『Misinner Blues』を。今まで何度も聞いたことある曲だけど、曽我さんがゲスト参加したライブは2回しか見ていないので貴重である。続いてアルバムから『干支ノス』『習う』『Ghede Humming』と。スティールパンが機械的な音の中で非常に肉体的な音を出していて印象的。そして最後は再び二人に戻ってライブでは定番の『宇宙の犬』『ムッシュ・ミヤタケ』。この2曲はやっぱり盛り上がります。特に『ムッシュ・ミヤタケ』の疾走感がかなりかっこよかった。今後、機械に弄ばれないようにいろんなグッドラックヘイワが見られると感じたライブでした。音源よりも攻撃的な鍵盤が聴けるし。
続いては初めて見る巡礼。噂どおりに地べたに座ってあぐらをかいて演奏ということで観客は床に座って見ることに。怪しげなライトと怪しげな機械とタブラ、そして怪しげな衣装を着たASA-CHANGU-zhaanが登場。超絶タブラ演奏で始まったライブは、どこか異次元に飛ばされたかのような雰囲気。とっても神経質なライブが始まるのかと思えばASA-CHANGの軽快なMC(別名:司会・進行)でちょっとリラックス。2曲目は噂のマシーン「巡礼トロニクス」(これ)の威力を見せ付けるということで始まったのが、トランペットとアルトホルンの合図でプログラムされた曲が流れていくもの。これが非常に不思議でおもしろかった。いったいどういう仕組みになっているんだろう、音の高さや音数に巡礼トロニクスが反応するんだろうか。巡礼の音楽は非常に実験的で、1〜12を数える声のすきまに二人が「1、2、1212…」などとはさんでいく『12節』(声は原田郁子)はとっても不思議。星野源作詞の『ウーハンの女』を「作詞してもらったけどインストでやります」としてASA-CHANGがトランペットでメロディを演奏したものの、調子が全然よくなくて音が外れまくりだったので「すいません!あまりに下手くそなんでやっぱり歌います!」と途中で歌に切り替えたのは演出なのかマジなのか。それにしても、やっぱり今回圧巻だったのは新譜の表題曲である『影の無いヒト』。U-zhaanタブラによって解体された言葉と、ASA-CHANGのリズム(紐を口で咥えてシンバルを刻み、電子ドラムをたたく)が見ている人をどんどん魅了していきました。『つぎねぷと言ってみた』もスゴかったけど、『影の無いヒト』は唖然とさせられます。
アンコールでは巡礼にグッドラック+曽我大穂が加わり『カクニンの唄』の合唱。おなじくあぐらをかく伊藤名人に対しなぜか正座で合唱していた野村卓史に女子たちは釘付けだったそうな。最後の最後でなんだかほっこりした感じになって終わりました。とっても貴重なライブ、ありがとうございました。ちなみに会場では9月に行われるグッドラックヘイワのワンマンライブチケットが発売されていたので、ほくほく顔で購入して帰りました。ワンマン楽しみ!会社員にやさしい平日20時スタートだし!


GALACTICによるレポート