「Loser's Parade」

for さえない日々

De La FANTASIA〜FANTASIA Label Show Case 09〜@恵比寿リキッドルーム

サ…サケロックオールスターズがライブをするだと!?しかも細野さんまで出るだと!?と鼻息荒く早々にチケットを取ろうとしたものの、チケット代の高さに挫けそうになりましたが、そこは立派な社会人なのでビシッとお金を払って見てきました。その他出る出演者も、噂にちらっと聞いた鎮座DOPENESS、バックバンドがえらいことになっている内田也哉子率いるsighboatが気になっていたのでした。そして…これは本当に見れて良かった!なんたって、“サケロックサケロックをやった”んですよ!これはアガらざるを得ない!


ということで、最初から順立てて追っていきますと、先頭はaus。途中から見たのですが、ウィスパーボイスに打ち込み、そして激しいドラムが混ざり合うような感じ。静かな曲でも技巧的なドラムが鳴り響いているのに目を奪われました。続くsighboatはなんといってもバンドメンバーが渡邊琢磨 a.k.a.コンボピアノ鈴木正人 from LITTLE CREATURESのレギュラーメンバーに加え、サポートには内橋和久(くるりのサポートでアバンギャルドなギターを弾いてました)、千住宗臣(ご存知ウリチパン郡、PARA、かつてはV∞REDOMSにも在籍していた若手最重要ドラマー)というコンボピアノバンド布陣。豪華すぎる。とにかく内橋さんのフィードバックノイズが美しかった。内田也哉子さん(a.k.a.モックン嫁)は英語でぼそぼそと話すかのようなボーカル。続いて突如ステージ横のDJブースに現れた鎮座DOPENESS。「面白いから見ておいたほうがいい」と聞いていたんですけど、確かに面白かった。アウェイだということを自覚しながらの盛り上げ、引き込みが素晴らしく、まさにエンターテイメント。一人でサンプラー(DJ卓?)を操りながらラップするという手法はイルリメを彷彿させる。そして、何よりも、声が渋くてラップがうまい。プロフィールを見ると“HIFANATWIGYの作品への参加やL?K?OとUZhaan(ASA-CHANG & 巡礼)のユニットOIGORU, TOWA TEIのREMIXへの客演”という表記があり、様々なフィールドで活躍しているのがわかります。「鎮座」という言葉がかもし出すように、トラックは全体的に「和」の要素が強かったです。


そして2年ぶりのサケロックオールスターズ。来るぞ来るぞ、とワクワクを増幅させる7拍子のリフから始まる『七拍酒』はサケロックオールスターズを代表する曲。続けざまにSAKEROCKの曲である『慰安旅行』はスティールギターの前奏から始まり、ASA-CHANGのコンガ+伊藤大地のドラムで幕開け。Aメロ、Bメロはスティールギターが、CメロはASA-CHANGのトランペットがトロンボーンに追加されて重厚なメロディになってかっこいい。Aメロがかなりスローな展開から始まった『2,3人』を終えて続くは久々に聴いた『スーダラ節』を星野、高田、ASA-CHANGと順番にボーカルが変わっていく形で。そういえば星野リーダーが立って唄うのって、初めて見たかも。あと高田漣の歌声も初めて生で聴いたけど、渋くて甘かった。そしてラストのASA-CHANGは一気に「場末のスナックで歌ってる課長」に早代わりしてしまいました。
そしてそして…今日の個人的ハイライトだったのがここ。星野リーダーがマリンバに、高田漣エレキギター(TEISCO製?)にポジションチェンジ。「あれ?オールスターズでマリンバ叩く曲あったっけ?『会社員』とかでもやるのか?」と思ったら…なんと『Firecracker』!マーティン・デニーの曲であり、細野さんがこの曲を「シンセでディスコ風にアレンジした曲を全世界で400万枚売る!」と構想を練って結成されたのがYMO。今年のワールドハピネスでもYMOがアンコールで久々に披露して観客を熱狂させた曲!これは本当にアガりました。どちらかというとマーティン・デニーのアレンジに近い感じ。そして中盤で急にテンポが落ちた後、「うん、たった、うん、たん」の手拍子が始まり、あのベースラインが奏でられた。…これは!『Sake Rock』!そうです、『Firecracker』の主旋律はそのままで、テンポを落として東洋チックなアレンジにするとそのまま『Sake Rock』という曲に早変わりするのです。そしてこの曲名で分かる通り、この曲こそがSAKEROCKのバンド名の由来となった曲。きっといつかはこの曲をカバーするに違いないと思ってはいたのですが、まさかこんなところで、『Firecracker』と繋げてしまう解釈で聴けるとは…!満員のリキッドルームの中、ステージを見るのも一苦労する体勢で、心の中では「ぎゃー!!」と叫びつつ、顔はにまにまと気持ちの悪い笑顔を浮かべてしまいました。
MCによるとリハは1回しかしていないそう。でも、絶対リーダーは昔っからこの曲をマリンバでコピーしてたでしょ。いや、していないとおかしい。自分のバンド名の由来となった曲であり、マリンバが主役の曲だもの。そんな妄想により、「リハは1回だけどこの完成度の高さの謎」を自己解決させました。「(細野さんもいるから)緊張した」って言いつつも、非常にかっこよかったので、これは是非とも『千のナイフ妖怪道中記』に続くマッシュアップシリーズ第2弾としてリリースをしてほしい。最後は浜野歌唱による『本当の出来事』。この曲は浜野ボーカルなのですが…いやー、久し振りに「浜野の悪ふざけ」を堪能した。ここ最近では『生活』の前にやる「対決」という名のおもしろワード大喜利に凝縮させている悪ふざけが、ここで久々に爆発。いろいろ間違ったテンションで客を煽る姿に、「ああ、なんか、懐かしいなー、このむかつく感じ…」としみじみ感じるのでした。いや、面白かったから笑ってたんですけど。


大トリは、細野晴臣御大。バンドメンバーは引き続き高田漣、そしてSAKEROCKから伊藤大地。ベースに伊賀航、鍵盤はコシミハル。今回もカントリー、スウィングの名曲カバー連発。途中、コシミハルがボーカルを取る場面も。カバーだけでなくこのバンドメンバーで作った新曲まで披露。『香港ブルース』『Body Snatchers』、アンコールには『Pom Pom 蒸気』という細野さん自身の曲もやってました。…って、後から調べたら『香港ブルース』もマーティン・デニーのカバーなんですね。細野さんのソロアルバム「 泰安洋行」に収録されてるから自身の曲だとてっきり思ってました。それにしても今回の細野さんのMCは「暴走?」ってくらいにデタラメなことばかりしゃべってましたね。「このバンドは兵隊さんの前で演奏してたから、結成から60年くらいかな?」とか「いろいろ進駐軍を回ってます」とか。苦笑いです。しかし演奏は大変渋く、ゆったりとスマートに繰り広げられました。御年62歳。日本語ロックからトロピカル、テクノ、アンビエントと縦横無尽にジャンルの幅を軽やかに渡っている御大は現在、テクノ(YMO)と同時進行でカントリーを奏でています。



今回のイベントの趣旨は、各レーベルの代表選手が集まった、的なことだったようなのですが、どれも個性的でした。結構外国人が多かったのは誰を見に来ていたのだろうか。細野さん?ちなみに今回のイベントの紹介で記載された「世界に誇る世田谷のインディ魂”カクバリズム”」という文が面白かった。インディ魂て…。あ、そういや転換中に先日の舞台で金髪となったクドカンを見かけました。あの芝居見てないとあの金髪髭面がクドカンだって気が付かないだろうな。