「Loser's Parade」

for さえない日々

ねんまつのぐうぜん@東京キネマ倶楽部(12/13)

ねんまつのぐうぜんは、ねんまつのきせきになりました。


昨日に続き鶯谷へ。年末に鶯谷へ2日連続で行く行為もこれで3年目。そしてこれが今年最後のサケロックライブ。サケロック納めです。二日続けて同じライブに行くことに少々抵抗もあったのですが、結局ライブが終われば「あー、行ってよかった!」となってしまうのでした。今回のライブは、昨日とは違い、様々な奇跡が舞い降りたのでした。
まずは開演前。ステージ下手側で待機していると、横でちょこちょことすばしっこく動く人物を発見。ハマケンだった。なんともう開演時間だというのに、客席に下りてトイレに行ってしまったのだ。そして他のメンバーが素晴らしいのは、トイレに行っている隙にステージに登場してしまうこと。それに気づいて慌ててそのまま舞台に戻るハマケン。このやりとりが、オレのすぐそばで起きていたのだ。何かが起きる予感。何だか今日のライブは昨日と違うことが起きるのかもしれないと思ったのですが、それは現実のものとなったのでした。
滑り込みで『モー』のイントロリフを吹く浜野さん。その後ミドルテンポの曲から一気に『慰安旅行』『菌』と勢いのある曲へなだれ込む。この2曲はオープニングにふさわしい2大盛り上がり曲。曲間、ワンマン特有のダラダラしたMCをはさみ、『進化』『やおや』『穴を掘る』。徐々に唄いだす。そう言えばこのあたりのMCだったか、「馨くん、なんか質問したいって言ってなかった?」と振られて出た質問が「普段から体を動かす人」。なんというか、田中名人が普段は寡黙(SAKEROCKのライブ中に限る)だという前提、今までバカなやりとりを浜野+星野で繰り広げられていたというフリ、そしてお客さんの期待感、ワンマンライブというホーム感。これらの条件がすべて整わないとこんな何の変哲もない質問で爆笑することなんてなかったのかもしれない。これが、奇跡の序章となったのは過言じゃないかも。
続けて『ちかく』『今の私』『エンディング』と、感動的な曲が並ぶ中、なんとなくだけど浜野ボーンのミスが目立つようになってくる。前日のライブでは好調な鳴りをしていたのに、特に『今の私』ではかなりあやうい演奏となっていた。そして、これが最後の奇跡の伏線となるだなんて思ってもいなかったわけで。
浜野さんに奇跡が舞い降りたのは最近復活した曲『京都』でのこと。この曲は初期から演奏されている、SAKEROCK作品の傾向とは間逆で、完全にふざけているとしか思えない浜野作詞作曲ボーカル曲。「ぐうぜんのきろく3」で収録されていたからなのか、『京都』をやけにメロウなアレンジに演奏しだすメンバー(+静かに登場する野村卓史)、そして突如服を脱ぎだす浜野。Tシャツ+パンイチ姿で熱唱する姿にメンバーも客も苦笑いしかできない状態。それは前日でも同じ光景が繰り広げられていたのだが、この日は事前に「好きにやっていいよ」と言われていたためか、キネマ倶楽部ステージの横にあるサブステージに上り始めたのだ。そのときだ。ハマケンが急に「痛い!」と叫びだす。なに?なにが起こったの?よくよく様子を見ていると、なんとマイクで感電しているようだ。「痛い!何これ怖い!助けて!」と助けを呼ぶハマケンにメンバーは爆笑。原因はサブステージにある鉄製の手すりに触っていたことだそうで、多分ハマケンの汗も関係しているんじゃなかろうか。更に感電に恐れたハマケンがステージに戻ろうとするも、マイクコードが引っかかってステージに戻れないという2段オチも発生。笑いすぎて星野リーダーのジャズコーラスギターアンプ)からはリバーブがよく効いた「ピシャーン!」というバネ振動の音が鳴ってしまう始末。すごい、完全に今、笑いの神が降りた。そしてこの神は、この時点で天に帰っていたわけではなく、最後までライブを見ていったのでした。
続く『やわらかいリーゼント』は、音源化はおろか、「アキハバラ@DEEP」のDVD-BOXにすら全編通して入っていない。なのでドラマのエンディング部分、もしくはチャプターメニューで断片を聴くことができるのですが、それを聴きすぎていた+あまりに好きすぎて妄想で勝手にアレンジやメロディを書き加えていたっぽく、「ついに聴いてしまった…」という感慨深さと「あれ?知ってる曲じゃない!」というなんとも偏屈な思いがよぎったのでした。その後リーダーがマリンバにジョブチェンジを行い、『ホニャララ』。今回の『ホニャララ』後半は、昨日のテンポより明らかに早い、最速のものとなりました。野村氏もなんだかノッている感じが伝わってくる!続けて『千のナイフ妖怪道中記』では、DVDを見たあとだと「あ、今回マリンバ前にマイクが3本立ってる!大丈夫か!?」などと余計な心配をしてしまったが、まったく問題ナシ。しかしこの曲のマリンバさばきは改めてすごいなー、と、とっても単純な感想しか出てこないくらいすごい。そうしてマリンバに見とれていると、もう一つこの曲をライブで見るときに好きな場面である伊藤名人の「スティックからタンバリンに持ち替えシンバルを叩き、その後いつの間にかスティックに戻っている」というイリュージョンのようなドラム捌きを見逃しそうになる。スティック、ブラシ、時にはお手製のブラシ風スティック、タンバリンを操り、終いには手でドラムを叩く伊藤名人。まさに名人芸。
『餞』でみんながカズーを吹く展開もおとぼけながら祝福に包まれ、『最北端』で北陸の自然を受け止めつつ(…すいません、やっぱり北陸感は感じられませんでした)、『会社員』で一気にスピードアップ。そしていよいよラストの『インストバンド』では、改めて野村氏も含めた5人で演奏出来ていること、演奏を聴くことが出来ることに感謝して第一幕は終了したのでした。
そしてアンコール。まずは野村氏も含めての『サケロックのテーマ』。昨日は明言しなかったけど、野村氏も加わるためにアレンジを書き換えたという、5人での『サケロックのテーマ』は、Part2と付け加えられた。『サケロックのテーマ』を5人でやるっていう演出もなかなか憎いところです。そしてお次は、待ってましたの恒例『生活』対決。DVDではツアー中に20分くらいかかって試行錯誤しながら面白ワードを練りだしている苦悩の姿が垣間見えるが、今回もなかなか笑いの神は降りてこず。さっきまでいた神も天に帰っていったか?と焦る面々。打開策として伊藤名人から提案されたのは、「客席に降りて、そこでスキャットする」という案。一度「関係者席でスキャットする」という案も出されたが、さすがにそれは却下され、実行に移る。幾度かのフレーズが産まれては消え、を繰り返して行くうちにようやく舞い降りた瞬間が来た。ようやくイントロを演奏し、いざトロンボーンが第一音を吹こうとすると…
「スカっ」
あ、え、おい、まじで?なんと、浜野さんがトロンボーンで大いにミスってしまったのだ。あんなに時間をかけて積み上げてきたのに。ここで綺麗にエンディングを迎えられると思ったのに。これには全員がズッコケ&ブーイング。笑いの神は最後まで彼を見捨てていませんでした。というか、誰も予想が付かないほどの展開を与えていきました。まさに奇跡。こうしてなんとも心にもどかしいカタルシス(by とんねるず『一番偉い人へ』)が解消されないままWアンコールへ。でも、なんだかこれはこれでSAKEROCKらしいっちゃあらしい展開だなー、なんて思いました。思い通りにはいかない感じ、いかせようとしても神がそうはさせない展開に持っていかれるあの感じ。そんな泥沼のようなライブ(野村卓史発言)も、『エブリデイ・モーニン』を聴いているうちに夜明けが見えました。あ、なんだ、結局オチがついたじゃないか。
ということで、最後に二日間のセットリストを。ちなみに二日とも同じセットリストでした。

  • 1.モー
  • 2.慰安旅行
  • 3.菌
  • 4.進化
  • 5.やおや
  • 6.穴を掘る
  • 7.ちかく
  • 8.今の私
  • 9.エンディング
  • 10.OLD OLD YORK
  • 11.京都
  • 12.やわらかいリーゼント
  • 13.ホニャララ
  • 14.千のナイフ妖怪道中記
  • 15.餞
  • 16.最北端
  • 17.会社員
  • 18.インストバンド
  • en-1 サケロックのテーマpart2
  • en-2 生活
  • w-en エブリデイ・モーニン

浜野謙太…というかハマケンというのは、音楽界の山崎邦正なのだな、と思った。基本的に自分から何かやろうとしても「そこそこ」で終わってしまう。だけど時折「笑いの神」が奇跡を起こしてくれるのだ。山崎邦正が落語やピアノを始めては中途半端になってしまうと同様、ハマケンもあっちへふらふらこっちへふららと落ち着きがない印象を受ける。しかし、それを周りがガッチリサポートして、神の降臨を待っているのだ。ハマケンにとってのダウンタウンは、SAKEROCKのメンバーかもしれないし、今田は角張社長かもしれないし、東野は在日ファンク(というか、ピートさんか?)かもしれない。ハマケンが「あと何年このキャラで行けるのだろうか…」と周りも自らも不安視するかもしれないが、大丈夫。だって、山崎邦正は40超えてもいまだ現役である。決して落ちることのない、ハプニング芸人の地位を手に入れているのだから。これからも「ガキ使」のようなSAKEROCKのライブに足を運ぶのが楽しみでしょうがなくなってきました。また来年もよろしくお願いします。