「Loser's Parade」

for さえない日々

松尾スズキの覚悟を見た夜

芥川賞に該当作なしという結果が発表されました。本を読まない自分にとってこの結果に対してどうこういう権利は全くないのですが、気になるのは松尾スズキの心境でした。昨年末に始められたtwitterにて、芥川賞候補にノミネートされたとき、以下のように語っていたからです。

matsuosuzuki老人賭博が芥川賞候補にノミネートされましたー! って、素直にはしゃげないのは、あの落選した時の梯子外された感の苦さを知っちゃってるんでねえ・・・・。あれ、けっこう心に来るのよ、周りの担当の落胆ぶりとか目にすると。次の日「腫れもの」みたいな目で見られるし。でも本売れるといいなあ・・link

そして今回、このような結果になったのですが、発表の夜、松尾さんはふと呟きます。

matsuosuzuki帰ってきて総評を読んだのです。「全体的に今書きたいという意欲が感じられい・・・」。本が売れないこのご時世にあえて紙媒体で勝負している俺たちに本気でそんなことを言ってるのか、と思いました。きれいごとなんじゃないか、とも。でも、負けないですよ。そういうことじゃない。俺は負けないです。link
この発言は、多くの人達にRT(ReTweet・転載)されます。

matsuosuzuki今つぶやいたはしから50件近くのRT・・・。返さずにはいられません。みなさん、ありがとう。正直泣けたぞ! 紙が売れない今、それでも紙を選ばずにはいられなかった俺たちの切実がわかってない。でも、それが現実とすればうけとめます。でも、負けないんだ俺は。負けないようにできてるんだから。link

繰り返し、紙媒体でしかできない、いや、紙媒体を選ばざるを得なかったという切実さを述べ、「負けない」とつぶやく。まるで自分を奮い立たせるかのように。ここに、松尾さんの覚悟を見たような気がします。完全に出版業界は下火となっている今、メディアの世代交代が騒がれようとも、それでも紙媒体の力を信じているあたりは、共感が持てます。確かに自分はあまり本を読みませんが、前職は印刷会社勤務だったため、やはり紙には愛着があります(触って紙の斤量が分かる程度には)。そして、今Web業界にいるからこそ、紙でしかできない表現があることもわかります。こんなことに負けず、松尾さんには良質な作品を産み出していってほしいです。