「Loser's Parade」

for さえない日々

その名はSPIDER

先週の話だが、「博士・大吉・大介のお笑いメディア道場」というトークイベントに行ってきた。今回の話題の中心は、「SPIDER」という、ざっくり言ってしまえば“1〜2週間分の地上波テレビ番組・CMをまるまる録画する”もの。「でっかいHDDレコーダー?」いや、そうではなかった。これは、翳りを見せているテレビ業界が生き残る1つの手段を提示しているものだった。
SPIDER PRO | スパイダープロ(法人用)
このトークイベントはUstreamで生配信され、現在でもアーカイブを見ることができる。「テレビ業界」「広告業界」に少しでも興味がある方は、一見の価値ありだと思う。
Ustream.tv: ユーザー nob-kodera: 博士・大吉・大介のお笑いメディア道場, Recorded on 2011/01/23. ガジェット

さて、掻い摘んでこのイベントで語られたことについて説明すると、
広告市場は国内総生産の1%。それは絶対変わらない。それをテレビ・ラジオ・新聞・雑誌で分けていたが、そこにネットが入ってきたため5分割となった。総量が変わらないのにネットという強力な媒体が進出してきたために、他の媒体はどんどん広告収入が確保できなくなってきている。こうしてテレビが弱体化しつつある現状を打破するために登場したのが、このSPIDERだというのだ。
「CMを飛ばされるからマズいんでは?」という危惧が当然ある。しかし、「CM自体が面白かったら、見ますよね?」という理論。最近だったらマクドナルドのイカれたCM、噂を聞きつけてYOUTUBEでCMを見たという人も多いと思います。SPIDERは番組だけでなくCMも個別にアーカイブされ、更に商品名やジャンル、出演者によって検索が可能。つまり、TVCMが街角のビラ巻きから、ひとつのコンテンツというポジションに変化する、ということだ。こうなると大金叩いて視聴率の高い時間帯に広告を打つ(=「出来る限り人通りの多い場所で無作為にビラ撒き」)という、反応があるんだかどうなんだかわからないようなことをせず、時間帯は気にせず、質の高いものを制作すると、お客さんが検索して見に来るという。
更に検索に加えてTwitter連携のようなクチコミに特化した機能もあるため、評判がよければ瞬く間に広まっていく。更にこの方式を取ることにより、ネット広告と同じようにターゲット広告やアフィリエイト広告、検索連動型広告などが可能になる上、ネットがバナー広告から始まりどんどん進化していったように、テレビ広告も進化していくことが可能だという。
質を重視するというCM制作にシフトチェンジしていく必要がある。そのため、この動きは、正直まだまだ広まらないのではないかと思う。なにせテレビ業界や広告業界の権限を凝り固まった老人たちが握っている。余程の勇気や変革意識がない限り、根本を覆すようなことは行わないだろう。しかし、この商品が受け入れられた途端にテレビ業界は一変するのではないだろうか。

テレビが弱体化していくなかで、世間ではよく「今のテレビは面白くない」と言われている。しかし、本当にそうだろうか?その屁理屈に反論するデータがある。現在、地上波だけで1週間で2000番組が放送されているそうで、我々がパッと挙げられるのはせいぜい20〜30番組程度。そう、テレビ番組は、99%が知られていない。「今のテレビは面白くない」って言ってる人も、1%で判断しているだけなのだ。しかし、99%の中にも当然面白いものはたくさんあり、その偶然の出会いを提供してくれるのがこのSPIDERなのだという。「テレビやHDDレコーダーは、PCを買うより難しくなってしまった。テレビは面白くないのではなく、便利じゃないだけ。」という有吉社長の言葉がとても印象的だった。


実際動画を見ていただければわかりますが、とにかくこのSPIDER、起動が早い!操作がサクサク!今のテレビやHDDレコーダーのようなもっさり感がない!会場で見てすごく驚いた。更にSPIDERの特徴である検索についてだが、検索ワードは全て人的に入力されているらしい。24時間、365日、テレビを見ながらワードを打ち続けているスタッフがいるのだそうだ。そのアナログ的行動が、しかし財産になっている。


年末にはブルーレイレコーダー並の価格で個人向けに提供予定だという。これでテレビの世界は変わるのか。


また、この中継が行われる前に、博多大吉が一時期Twitterを辞めていた理由が明かされたのですが…なるほど。これは会場に足を運んでおいて良かった。