くだらないの中に／星野源

「初めて正面から作ったラブソング」とのことだけど、あまりにド直球な愛の歌で、初めて聴いたときはビックリした。「髪の毛の匂いを嗅ぎあって くさいなあってふざけあったり」と、なかなかインパクトのある言葉で始まるこの曲は、穏やかだけどとても力強い。匂い嗅ぎ合ってふざけるって、よっぽど心許さないとできなくないですか？そんなことないのかなー。続く歌詞を読んでいても、強固な絆を持って満たされている2人がありありと想起されて、なんだかむず痒いくらいなのです。
力強さの理由は、登場人物の2人の絆ってのもあるけど、途中で示唆する自身の「歌い手としての進む決意」であったりもする。メジャーレーベルからシングルを出すって行為自体が決意の表れというか、挑戦という気がするのです。アルバムじゃなくてシングルって言うのが。CDが売れなくなったと言われて久しい現代にとってオリコンランキングやそれに伴う「CDTV」ランクインがどれだけの効力を持つのかはわかりませんが、それでもこうしていよいよ「流行」に突入する。しかし、「僕は時代のものじゃなくて あなたのものになりたいんだ」と、多くの人の耳に届けて、流されずにそれを各自に留めようと挑戦している歌。
ライターの松永良平さんの文章を見て「そうか！」と思ったのが、「唄」や「うた」ではなく、「歌」と表記し始めたのも、その決意の表れかもしれないということ。いろいろな強さがこの曲には込められている気がする。
そんな得意の厚顔無恥な妄想を頭に浮かべてこのシングルを聴いています。これまでの曲よりも比較的キーが高めなメロディと、やわらかいホーンアレンジ、ゆるやかなテンポが、ど真ん中直球ストレート勝負な感じでむしろ攻撃的な気もするのです。

タイトル曲以外にこのシングルにはあと4曲収録されていて、『歌を歌うときは』はライブの1曲目に必ず歌われる決意表明曲。『湯気』はこれまでになかったサウンド（伊藤名人のドラムが冴えてますよね）で「湯気」って湿り気たっぷりで抽象的で孤独な歌詞で新境地な感じ。『ブランコ（House ver.）』はタムくんの「ブランコ」発売記念に行われた原宿VACANTでの合同ライブで披露された、「ブランコ」の世界観を盛り込んだ名曲を宅録弾き語りで。そして『くせのうた（House ver.）』は「ばかのうた」収録のリード曲を宅録弾き語りで、更にはほぼ半分がアカペラ。途中にカラスの鳴き声が合いの手のように聴こえてくるのは、自主製作盤の「ばかのうた」に収録されているイントロやアウトロを思い出します。

くだらないの中に(初回限定盤)(DVD付) 星野源 ビクターエンタテインメント 2011-03-02 by G-Tools asin:B004GN9AKI

くだらないの中に 星野源 ビクターエンタテインメント 2011-03-02 by G-Tools asin:B004GN9B8O