「Loser's Parade」

for さえない日々

星野源 渋谷タワーレコード インストアトークイベント

「くだらないの中に」発売日である3/2、渋谷のタワーレコードでは購入者向けにトークイベントが行われました。それに参加してきたので記録としてここに書き留めておきます。


このイベント、司会進行(という名の話し相手)には、ロッキン・オン社で星野源をときに熱く語る男、兵庫慎司氏が決定していました。その兵庫さんのブログには、イベント前にこんな記事が上がっていました。
3月2日星野源 @ タワー渋谷の話 - 兵庫慎司の「ロックの余談」 (2011/02/28)| ブログ | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト
3月2日星野源 @ タワー渋谷の話 続き - 兵庫慎司の「ロックの余談」 (2011/03/01)| ブログ | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト
そう、かつてここでも記事にした「編集者のうた」を演奏するというではないですか。これは行かなければ!と、いそいそと渋谷まで行ってCDを予約しに行き、イベント参加券をゲットしたのでした。
さて、当日は兵庫さんによる公開インタビュー、イベント参加者からの質疑応答、最後に弾き語り、というプログラムでした。この内容を、印象に残ったトーク内容をピックアップしていきます。

―声にずっとコンプレックスがあったのに、それでも歌おうと思った理由は?
昔、知り合いの人にイベントに誘われたことがきっかけ。場所がすごく狭いところだったために実験的に弾き語りを行ったところ、観客で泣いてくれる人がいた。それを見て「あれ?もしかして自分は歌ってもいいのかな?」と少し前向きになった。しかし当時はまだSAKEROCKが軌道に乗る前で自分のソロに集中するわけにもいかず、少しずつソロライブを行ったり、CDブックを出すという活動にとどめていたが、「20代の間に全部出してしまった方がいいのかな?」と考えたことが「ばかのうた」発売きっかけになった。
―歌のスタイルはどうやって形成されたのか?
中学くらいから曲を作り始め、最初は周りのように激しい音楽がやりたかったが、やはり似合わなく、「やりたいこと」と「客観的に聴いて恥ずかしくないこと」のギャップを埋める作業をずっと行なってきた。その試行錯誤の途中で小坂忠の「ありがとう」を聴き「この歌詞はパンクだ!」と、うるさくなくてもパンクができることに感銘を受けたことが原点にある。
―音楽、芝居、文筆、映像…と幅広い表現を行っているが、昔からこれをやっていたということは、食えてなかった時期もあるのでは?
当然です!ものすごい貧乏でした。誰にも聞かせない曲、誰にも見せない文章を書いたりして…。
―貧乏でもやらざるを得なかったのは、「そして生活は続く」を読んでいて気がついたのだけど、もしかして苦手な「生活」の時間を減らそうとしていたのでは?
そうかもしれないです。
―「生活」は好きになりました?
好きになりました。今では料理をするようになりました。
―老人を題材にする性癖があるが、その理由について語っているいろんなインタビューを読んでもあまりピンと来なかった。本当の理由は?
自分でもよく分からないのですが…もしかしたらドラマ「おじいさん先生」の曲を作ったことがきっかけかもしれない。「おじいさん先生」という主題歌を作った際に、もうひとつ候補として挙げていたのが「老夫婦」だった。この頃から街のおじいさんやおばあさんが気になり始めた。
―老いとか死ぬとか、それを決して悪いものとして見ていないのではないか?むしろ「若いことは不幸だ」と思っているのではないか?
それいいですね!
―曲に出てくるのは「子供」か「老人」しかいませんね。
あー、そういえば。「未熟者」か「老人」ですね。
―「高校生」や「青春」ってのが皆無。
それは単純に僕に経験がないからだと思います(笑)。松尾スズキさんが「“青春”が周りを走りまわっていた」「自分は真空状態だった」って言ってましたけど、すごいよくわかりますもん!

さすが兵庫さん、かなりするどい質問や解釈をいろいろ行っていたのですが、覚えているのはこのあたり。もっと深い話とかしてたんだけど、長くなりそうなのでこのへんで。
続いては来場者からの質問アンケートからいくつかピックアップしていたのですが、一番印象に残っているのは「長編小説を書く予定はないのですか?」という質問に対し、「今まで何度もチャレンジしているんですけど、最後まで辿りつかない。仕事ってなったら締め切りがあるからできるかも知れないんですけど…」と言ったときに兵庫さんが「あ!ロッキンオンで出してみる?」と提案したこと。これは本当に実現して欲しい!


そして最後には弾き語りを披露。事前に告知されていたとおり、今まで2回しか、しかも限られた場所、人数の前でしか披露されたことがなかった「編集者のうた」がついに披露されたわけなのですが…これが、本当に名曲。
「アンドロイドが電気羊の夢を見るなら 編集者は何の夢を見る」で始まるこの曲の作詞は松尾スズキ。松尾さんのSPA!での担当だった方の失敗談を挙げていきつつ、「夢の中に松尾と星野が出てくる」と歌ったかと思えば突然「みんな目をつぶって!夢を見て!」という語りが入って「編集者さん ありがとう」「入稿 校正 ゲラ戻し」と感謝の意を述べ、「だからもうあとがき書かなくてもいいかな?」と落とす。いや、落としてはいるんだけど、この曲を最初から最後まで聞いたら実際に編集の職に就いてる方だったら嬉しくて泣いちゃうんじゃなかろうか。感動的な名作。本来ならば限られた場所でしか聴けない、限られた人に向けた宝物のような曲なのですが、それをちょっと盗み聞きしたような感じでした。ありがとうございました。
ちなみに弾き語りはこの後に「くせのうた」も披露して終了。個人的にはせっかくなので「くだらないの中に」を弾き語りで聞きたかったのだけど、「今日が発売日で、イベントに来てる人はまだ聞いてないと思うので、それは帰ってからのお楽しみとしてください」とのことであえて前の曲を演奏したとのこと。こんな事言われてしまっては…。