モーモールルギャバン「31歳、それでも若さを叫ぶ!!Too-Ah!!」@Zepp Tokyo(6/22)
心の底から、楽しかった。
自分が初めて行ったモーモーのワンマンは1年9ヶ月前の渋谷club asia(キャパ:約350)でした。そのときはすでに即完売&追加公演も即完売という自体に陥っていたために「人気とライブ会場のキャパが追いついてない!」と思ってたんだけど、さすがに今回のZEPP TOKYO(キャパ:約2700)は埋まるのか心配だったんですが…見事に完売!「『早く引っ込め!』なんて言われてたのに嘘みたい!」なんてゲイリーが途中で叫んでましたが、破竹の勢いとはまさにこのこと。ひとたびライブの評判が広がったら、ものすごい勢いで波及していった結果なのでしょう。
開演前、ギリギリで到着した会場内は今か今かと待ちわびるファンの熱気でむせ返るほどで、特にフロア前方はギュウギュウ。そんな中、ステージ後方に落ち着き開演時間である19時を迎えると会場アナウンスが。アナウンスを行ったのは舞台監督の方で妙にたどたどしいのがちょっとおかしい。ひと通りの注意事項が終わった中、「ライブはもうすぐ始まりますが、それまではこちらでお楽しみください」と用意されたのは、巨大バルーン。あ、リキッドルームワンマンのときもバルーンあったなー、これがあると開演前からなんだかワクワクするんだよなー、なんてことを思いながら、バルーンがやってこないフロア後方でその様子を伺う。
そして開演時間を少し過ぎたあたりで暗転。3人が登場…と思ったら、なんだかコーラス隊までいる!?モーモーにコーラス隊だなんてなんだか似合わなくてギャグみたい。更にゲイリーのためにドラム横にお立ち台まで用意。今まではバスドラの上に乗って煽っていて、これが原因で昨年のライジングサンで転落事故が起こっているために、それ以来ドラムセットに乗るのを見るたびにドキドキしていたのだけど、今回はそんな心配もなし万全の体制。
注目の1曲目は『パンティー泥棒の唄』。ド頭にこの曲を持ってくるのがとても意外だったが、冒頭は静かだけれども途中から爆発する曲で、みんなで「クロなら結構です!」と叫ぶので、掴みには実はピッタリだった。更に曲中、ライブが始まったばかりだというのに金色テープがキャノン砲から飛び出す。続けざまに「拝啓!安田美沙子さん!東京の街にライブをしに来ました!相変わらずわけのわからない唄ばかり歌ってます!」と、くるりの名曲『東京』オマージュを叫んで投入されたのが『美沙子に捧げるラブソング』。インスト『BeVeci Calopueno』からの、一瞬5拍子になるところが心地よい『Hello!! Mr.Coke-High』、こちらもほぼインストである『細胞9』からの「死にたい」コールが木霊する『琵琶湖とメガネと君』と、新作のツアーファイナルにもかかわらず、ここまで新作からの曲はなし。だからこそ良く知った曲を連発されたおかげでテンションはどんどん上がる一方。
「このまま歌ってばっかりだと死んじゃうから、ユコ・カティの美声を!」と、ボーカルをバトンタッチされて始まったのは『午前二時』。ここでようやく新作からの曲を披露。ここからは先程までの「狂乱の幕開け」感から一転、『僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ』、『コンタクト』と、ゆったりとした曲が続く。激しく、ハチャメチャな曲が目立ちがちだけど、こういったミドルテンポの曲からは歌詞の誠実さ、アレンジの切なさ、歌っていないときのゲイリーが放つずっとドラムソロかのようなドラミングなど、モーモールルギャバンの特異性を十分に堪能できる。
そう思っていたら『Smells Like SURUME』で一気にシッチャカメッチャカに散らかし、『ATTENTION!』でムーディに、『愛と平和の使者』で厳かにどんどん変化していく。ちなみに『愛と平和の使者』は、ゲイリーが同志社大学の神学部出身であることを踏まえると歌詞に重みが出ると思ってます。というか、「パンティー」などの変態的な歌詞ばかりがフィーチャーされているが、モーモールルギャバンの歌詞はとても良い。続く『裸族』だって、「君は静かに 瞬きもせず」から始まる後半の展開での歌詞はメロディと相まってとても切ない。前半との落差があって一気に引き込まれる。この日だって、この「落差」がとても重要なポイントだった。曲が終わると、ユコが後方に用意されたグランドピアノに移動。そして奏でられた『Good Bye Thank You』は、壮大で厳粛で、儚かった。
「バラードからまたこのテンションに持っていくの大変なんだよ!!」と、さっきまでの真面目なモードを照れくさく振り払うかのように始まったのは、『野口、久津川で爆死』。この曲は、ゲイリーがギターボーカルからドラムボーカルに転向するきっかけとなった野口という脱退したドラマーのことをネタにしていて、毎回曲の途中でマルガリータが野口ネタを声にエフェクトかけて話す場面があるのですが、今回は「野口くんは結婚して家まで買ったけど、離婚しちゃった。家は奥さんに取られちゃって、今は東京で彼女募集中」と近況報告。「野口くんが僕らに教えてくれたことは、女は顔で選ぶとろくな事にならない」という教訓をみんなで分かち合いました。
ここからはキラーチューン『POP! 烏龍ハイ』、『ユキちゃん』で会場は沸きまくり。そして『サノバ・ビッチェ』、『いつか君に殺されても』と新たな必殺曲を投下し、『サイケな恋人』で本編は終了。「見えないものを見ようとして」望遠鏡じゃなくて鏡、更には直に覗きこんでしまう歌詞も、ゲイリーが「知らない奴はYOUTUBEで予習くらいしてこい!」と言っちゃってる持ちネタ「これがJ-POPの限界です」も、2700人で行う「パンティー!」コールアンドレスポンスも、天井が降り注がれた無数の風船も、すべてが相乗効果でキラキラと輝いていた。鬱屈してぼやぼやしていた男のわだかまりが、ZEPP TOKYOで爆発して輝く瞬間を見れたのかもしれない。
「あと20曲くらいやってやる!…嘘!もう(手の握力がなくて)グーパーグーパーがおぼつかない…」と、全身全霊で演奏に臨むゲイリー、アンコールは再びユコがグランドピアノを演奏し『悲しみは地下鉄で』。そして“今、ウイスキーのCMソングにしたい曲”第1位(オレ調べ)の『MY SHELLY』*1でアンコールは終了。それでも鳴り止まない拍手の中、ダブルアンコールで登場するメンバー。演奏されたのは、ニューアルバムの1曲目ながら「Good Bye もう もう 時間です また会う日まで」と歌っちゃってる『スシェンコ・トロブリスキー』で、すべての演奏は終了。
その後、コーラス隊のメンバー紹介(kacicaの人と、マッカーサーアコンチから3名)を行い、ステージから客席をバックに写真撮影が行われ、このライブの様子がDVDとして商品化されること*2、そして秋にSTUDIO COASTとなんばハッチでワンマンが行われることがアナウンスされてすべてが終了しました。
「パンティー」の印象があまりに強く、そればかりがフィーチャーされるイメージがあるモーモールルギャバン。そのため、新作がわりとシリアス方向に寄っていたので「おや?」とは思っていたのですが、変態チックなことばかりを推し進めることなく、かと言ってライブのテンションは変わらず、むしろ落差があって楽しいだけではない深みがある。ポップでちょっと切ないメロディー、ひねった編曲、鬱屈としながらも日々を生き抜きがむしゃらに進む人間が投影される歌詞、そしてライブの楽しさと、プラス人間性。どれをとっても今、自分にとっては完璧で虜にならざるを得ないバンドです。もっともっとJ-POPにテロを起こしていけばいいと思う。
- 01.パンティー泥棒の唄
- 02.美沙子に捧げるラブソング
- 03.BeVeci Calopueno
- 04.Hello!! Mr.Coke-High
- 05.細胞9
- 06.琵琶湖とメガネと君
- 07.ユキちゃんと遺伝子
- 08.午前二時
- 09.僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ
- 10.コンタクト
- 11.Smells Like SURUME!!
- 12.ATTENTION!
- 13.愛と平和の使者
- 14.裸族
- 15.Good Bye Thank You
- 16.野口、久津川で爆死
- 17.POP! 烏龍ハイ
- 18.ユキちゃん
- 19.サノバ・ビッチェ
- 20.いつか君に殺されても
- 21.サイケな恋人
- Encore 1.悲しみは地下鉄で
- Encore 2.MY SHELLY
- W-Encore.スシェンコ・トロブリスキー
⇒モーモー初Zepp Tokyoワンマンで“J-POPの限界”に挑戦 - 音楽ナタリー
⇒モーモールルギャバン @ Zepp Tokyo | 邦楽ライヴレポート | RO69(アールオーロック) - ロッキング・オンの音楽情報サイト