「Loser's Parade」

for さえない日々

シングル「夢の外へ」考察〜カップリング曲

『夢の外へ』は新境地である“ド”ポップソング。そしてカップリング曲に目を向けてみると、こっちはこっちでいろいろと実験している印象です。

「パロディ」


こちらは映画「ぱいかじ南海作戦」の主題歌になっている曲。そのため、沖縄をイメージした曲ではあるのですが、この曲はいわゆる「沖縄音階」ではない(ですよね?)。沖縄っぽい節はサビ前の「♪歌ーいなーがーらー」のとこだけ。ここには「沖縄の音階や楽器を使わないで、どこまで沖縄っぽくできるか」という実験が行われたそうです*1
また、この曲は細野晴臣のソロ「泰安洋行*2の1曲目である『蝶々-San』をオマージュしていると推測されます。現に本人は「ずっとやりたかったおっちゃんのリズム。チャンキー・ミュージック。ごちゃ混ぜの音楽。」と発言しています。ちなみに「おっちゃんのリズム」とは、細野晴臣の『Pom Pom蒸気』の歌詞にもなっている、一拍子的なノリの通称。『パロディ』の歌詞に「南風は一拍子さ」っていう由来はここからだと思います。

ということで、『蝶々-San』のオマージュであると思われる部分を、細野晴臣マニアではないなりに頑張って挙げてみた。

  • 「蝶々」という言葉が歌詞に入っている
  • ピアノのフレーズで『蝶々-San』を真似ている箇所がある
  • 身近なミュージシャンがコーラスを担当している(『蝶々-San』は大瀧詠一山下達郎など。『パロディ』ではceroの面々など。)
  • コーラスにベースボイスが入っている(『蝶々-San』では「宿霧十軒」名義の大瀧詠一
  • ホーン隊を入れている
  • サックスソロがある

細かいところを探せばもっとあるのかもしれませんが、聞く比べるとこんな感じかと思います。細野晴臣愛に満ち溢れた曲です。

「彼方」

この曲は前作『フィルム』のカップリング曲を演奏したメンバー、ハマ・オカモトと神谷洵平によるスリーピースが再び登場。これは前回からだが、今までと違うメンバーで演奏するということ自体が実験でそれを継続しているのだと思う。現在のレギュラーメンバーは(伊藤大地含め)年上な上に、伊賀さん以外は出会って10年以上経つ気心知れたメンバー。二人とも年下で、新鮮な気分で演奏を行うことで新たな刺激を受けようとしているのでしょうか。ちなみにこの曲、一発録りでワンテイクでOKだったそうです*3

「電波塔(House ver.)」

House Ver.シリーズもこれで3回目。今回は初心に戻って弾き語りではなく宅録を行なっています。CD BOOK「ばらばら」のころのようだけど、音の雰囲気はむしろSAKEROCKでのサントラ「Penguin Pull Pale Piles Sound Tracks「BEST」」のような印象。こうした宅録も、音源でしかできない表現であるために一種の実験なのかもしれない、と思いました。ノスタルジーでたどたどしいピアノの音がいい味を出しています。
あと、これは特典DVDの副音声で話していたのですが、本来は『ニューヨーク』という曲を収録する予定だったそうなのですが、土壇場で差し替えたそうです。ちなみにこの『ニューヨーク』という曲、SAKEROCKの『Old Old York』の歌バージョンだそうで、これは絶対にどこかで披露してもらわないと困ります。そんな話聞かされたら、聴きたくなるに決まってるじゃないですか。

*1:2012/7/13放送 テレビ東京系列「音流」より

*2:ちなみにこの「泰安洋行」という曲名をもじって付けられたのがSAKEROCKの「慰安旅行」だと思っています。

*3:2012/7/5放送 スペースシャワーTV「音楽ヒミツ情報機関 MI6」より