「Loser's Parade」

for さえない日々

キャバレー@青山劇場

ふとテレビをtvkに回したらば、広島在住時代は毎週見ていたものの、東京に引っ越してからはいったいどのチャンネルで、いつやってるのかよくわからなかった「ホレゆけ!スタア☆大作戦」が放送されていた。ゲストが森山未來で“おーおーちょうど昨日キャバレーを見てきたところだよ”とか思って見ていたら、古田新太の「ウォーターボーイズやってるときに誰が嫌いやった?」というフリに「星野源、あの大人計画の…」という回答が返って来て思わず噴出してしまった。WB時代は練習嫌いで何度も逃げ出そうとしていて嫌なヤツだと思われてたそうで、仲良くなったのは撮影終了後にサケのライブに行ってからだそうな。なるほど、そこから「LIFE CYCLE」の『穴を掘る』参加に繋がっていくのですね。かつては“吉祥寺 石を投げれば童貞か、枡野か宮藤 楳図に当たる”*1如く、ライブに行けば近藤公園氏か森山未來氏が必ず出没していたそうだし。まさかこんなところでリーダーの話がでてくるとは。ビックリした。


そんなちょうどいい前置きが出来たところで。土曜日、午後7時、青山劇場。高いチケット料金を支払って行って来たのは松尾スズキが演出をするミュージカル「キャバレー」。もともとはブロードウェイでやっているミュージカルである、という他に、出演者くらいしか予備知識はなかった。おそらく演劇をよく見ている方々にとってはあまりにも有名なのであろうこの舞台。観劇経験が数える程度しかない自分にとってはなんにもわからない。分かるのは海外の物語であるというくらい。そもそも、自分はミュージカルの観劇が初めてでもあり、というか、ミュージシャンの星野リーダーが好きな自分にとって、演技をしているリーダーを生で見るのは実は初めてであったし、松雪泰子も、阿部サダヲも、森山未來も生で観るのは初めて…と言いたいところだが、そういやグループ魂を観たことがあったので、演劇サイドの阿部サダヲ村杉蝉之介は初めて。本当になんにも知識も経験もなかった。


そんなまっさらな頭で見たキャバレー、素直に楽しめました。「タモリが嫌悪している」というちんけな知識しかなかったミュージカルは、思ったよりも素直に芝居部分と歌部分を観ることが出来たし…って、これを本物のミュージカルと思っていいものなのか、ミュージカル好きな方に鋭いツッコミを入れられそうだが、とにかく、初心者でも面白く観ることが出来ました。妖艶な、でもちょっと可愛げな松雪さん演じるサリー。「さすがダンサー!」という動きのキレを見せてくれた森山未來演じるクリフ。「すげーな、やっぱこの人のエンターテイメント性は…」と思わざるを得ないサダヲ氏のMC。演技も歌も完璧な秋山さん演じるシュナイダー。どっしりとした印象を受けたサモ・アリナンズ小松和重氏は第2幕の幕開け前に客席に乱入してくるし、村杉氏は“ナチスに傾倒していく”っていうカルトな雰囲気がピッタリだったし、平岩さんは売春婦役だけど嫌らしさが全くなかったし、髪が発光していた星野リーダーは役名はないものの舞台の幕開けとシメを担当しつつ、サダヲMCのアシスタント役だったり、セルライトを嘆いてみたり、やっぱりギターを奏でてみたりと大変おいしい役。みんながとても魅力的でした。いやはや!面白かった!
ストーリーの予備知識がなかったため、この舞台がナチスが台頭してくるあたりを描いているのを理解するのに時間がかかり、物語の本質理解が遅くなりましたが、なんとも儚い。2,000円で購入したパンフレットに書いてある演出家松尾スズキの言葉を読むと、今回の舞台が「人生はキャバレー」という言葉に尽きるのも松尾さんの今年起こった出来事が反映されているからなのか、なんて思ってしまう。そんなことを思っていたら、観劇中になんだかいろいろ自分に置き換えられる場面が多々あり、苦しくなってきた。人生はキャバレー。物語の登場人物、もしくは松尾さんほどではないが、自分の身にもつい数ヶ月前にいろんな出来事がまるでショートコントのように過ぎ去っていったし…ああ、いかんいかん、私情が入りすぎた。

*1:ショートソング(枡野浩一著)の宮藤官九郎解説より