「Loser's Parade」

for さえない日々

「そして生活はつづく」星野源

「ズルいなぁ…。」これが、本を読み終わったときに思った感想だった。
この本は、筆者のダメ人間っぷりを赤裸々に告白し、それでもどうにかして日々の生活をこなしていこうとするエッセイ。バンドもやって、俳優もやって、終いには映像作品を作ったりこうして随筆にも手を伸ばす筆者。外から見ればとても有能でマルチな才能溢れる稀有な人物。だけど、それでも日常生活はその辺の兄ちゃん並に、ヘタするとその辺の兄ちゃんよりも自堕落で、公共料金の支払いは忘れるし、宅配便が来ても出ないし、洗い物はすぐ溜まる。
同い年の男子で自分も「生活に難あり」のため、共感できることは多々ある。同じく公共料金の支払いは忘れるし、宅配便が来ても出ないし、洗い物はすぐ溜まる。「なんだ、自分とおんなじじゃないか」、なんて思ってしまうが、ここで注意いただきたい。何せ相手はあの星野源。やっぱりバンドもやって、俳優もやって、終いには映像作品を作ったりこうして随筆にも手を伸ばすマルチな才能溢れる稀有な人物だ。だいたい、昔から芸能に関わる人っていうのは私生活は破綻していると良く聞く。俳優だって、芸人だって、バンドマンだって、まともな感覚を持っていては到底手に負えない職業なんだから、“そちら”の才能に欠けてしまうのは一般論で言うと当たり前だ。その上筆者は女性に大人気。「一緒だ」なんて思うのは大いなる勘違いなのだ。月とスッポン。天上人と地べたを這いずりまわるゴキブリ野郎ほどの差。だから、なんだか「“あえて”こういうことを書いている」というのがどうしても見えてしまうのだ。だから「ズルいなぁ…。」という感想になってしまう。危ない危ない、ダマされるとこだった!
これは、ある種の物語だ。そう思うと、すんなりと「面白い」と思えてくる。いや、子どもの頃の話だとかは確実に実話なんだろうけど、これはエッセイという皮をかぶったショートストーリーなんだと思う。特に『舞台はつづく』の章で語られる「ある俳優」の描写なんて、物語として最高に面白い。いや、きっと某俳優M川氏の実話なんだろうし、M川氏だからこその無茶苦茶ぶりなんだろうけど、描写と話の運びが面白い。
個人的には筆者が書くお話がとても好きだ。かつて月一で公開されていた「唄い出す小説」なんて、とっても好きだった(特に「夢の国」「なにもない」「わがままの妻」「ストレス」)。あと、弾き語りのときに登場する歌詞も好きだ。是非とも書き下ろしも含めて一冊にまとめてほしい。


…なんてな感想を言おうと思っていたんですけど、本人目の前にすると頭が真っ白になって言いたいことが何にも言えませんでした(先月末のサイン会にて)。残念。


そして生活はつづく
そして生活はつづく
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