「Loser's Parade」

for さえない日々

五反田団「生きてるものか」@東京芸術劇場

友人に誘われて見た芝居。全然知らなかった劇団だったのですが、主宰の前田司郎氏は岸田國士戯曲賞受賞、小説では三島由紀夫賞と取ったり芥川賞の候補になっているほどの人物。テレビドラマ「漂流ネットカフェ」の脚本も手がけるなど、かなり注目されている人物。うといですね、自分。今回は岸田國士戯曲賞を取った「生きてるものはいないのか」をと同時上演されている新作「生きてるものか」を見ました。この芝居、仕掛けがありますので、これから見るって人はネタバレを読まないように。
何かが「ドサドサッ」と落ちるような音がした後、全員が倒れたところで明転。どうやらみんな死んでいる様子。しかし、一人が痙攣して生き返り物語が進行。のちのち気が付いたが、これは生き返る、ということではなく、「物語を巻き戻して見ている」構成になっていました。一番最後の場面から巻き戻しボタンを押して、ときおり再生ボタンを押すような感じ。こうして、最終的には全員が原因不明の現象で死んでいくものの、その前にはどのようなことが起こったのか、どのような人間だったのか、どのようなつながりを持った人間たちだったのかが明らかになっていきます。この構成、役者さんは覚えるのが大変だろうなー。物語が逆に進行していくから混乱してしまいそう。
今回、一番おもしろかったのは、舞台初挑戦だという歌人枡野浩一さん。すべてが卑怯。飄々とした風貌や言動はまるで当て書きのよう。いちいち面白くてすべてを掻っ攫っていきました。佳境になって分かる彼の正体や前田司郎演じる人物との関係性は、あまりにもくだらなかったです。
「生と死」という重いテーマを扱っているにもかかわらず、前田司郎氏の風貌同様、なんだか飄々とした印象を受けました。リアルでいてリアルでない。なんだか浮世離れした感じ。きっと同時上演の「生きてるものはいないのか」も見るともっと面白いんでしょうが、こっちだけを見ても十分楽しめました。

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