「Loser's Parade」

for さえない日々

堀川中立売

と、「悲しみは地下鉄で」目当てで見に行った京都映画2本立て上映だったのですが、まんまとこっちのパワーにやられました。
柴田剛監督 映画『堀川中立売』

見終わって真っ先に思った感想。「よく許したな!」。夜の野外であんなひっちゃかめっちゃかなロケしててよく苦情が来なかったなー。あれってスタジオ内?いや、でも多分ロケだよなー。
終始「なんなんだこれは?」という感覚だらけで訳のわからないパワーで押し切られた感じでした。幾層にもストーリーが重なり合ってるし、設定もいまいちわからないし、やたらと混沌としているし、でもその風景は間違いなく「自分がかつて生活していた」「観光名所ではない」京都っぽくて、見終わった後はやけに充実した感覚。
この訳の分からない爽快感があったのは、自分がかつて京都に住んでいたからだろうか?18で進学のため上洛し初めて一人暮らしをしたのは、偶然にもこの堀川中立売という場所だった。なので見ていると見慣れた景色がたくさん。寺田が取引先の人に蹴られるシーンの後はまさに堀川中立売の橋。伸介がわいわい酒盛りしていたのも堀川中立売の橋の下。かつて自分がその場所で友人に恋愛相談をしたり、酒を飲んで盛り上がったりしていた場所だ。
映画の内容はSFで途中からむちゃくちゃな展開になっていくのだけど、なんだかそれも京都っぽい。特にあの中立売通り周辺は、堀川通というわりと交通量の多い通りに対して、千本通方面に西に行けばまだ開けているのだけど、烏丸通方面に東に入ると道も狭くて一方通行だらけで、もしかしたらなんかあんなことがあるかもしれない、なんて思ってみたりもする。そんな分岐点である堀川中立売。オレの住んでたマンション、6畳一間で窓らしい窓がない光の指さないようなとこだったしなー。懐かしいなー、サンハウス京園。


この映画で中心となる人物「榎信介」を演じるのは、オシリペンペンズの石井モタコ。ライブでは無茶苦茶な感じなのだけど、この映画ではヒモでだらしなくて飄々としている姿は佇まい完璧。そして、なんだか峯田に似ているのが印象的。その他の出演者も一癖も二癖もある人たちばかり。桂雀々タージンなんていう関西在住者にはおなじみの顔も(タージン登場シーンは卑怯だったなー)。neco眠るあらかじめ決められた恋人たちへなどの音楽も効果的に使われていて燃えました。いや、なんでこんなに興奮したのかが説明がつかないのですが、自分はとても面白かったです。


ちなみにこの京都映画2本立ては東京での上映期間は終了。「堀川中立売」については引き続く関西で上映されていくみたいです。京都で学生生活をしたことがある、もしくは在学中の人、特に一人暮らしでうだつが上がらない生活を送っているような人にはおすすめだと思います。その「うだつが上がらない」感じも、モラトリアムな学生が多い京都っぽい雰囲気です。