「Loser's Parade」

for さえない日々

共感百景@草月ホール(前篇)

SLUSH-PILE. FESTIVAL 2 「共感百景」
MC:劇団ひとり
特別顧問:俵万智
出演(詠み人):有野晋哉よゐこ)、カリカ家城、清水ミチコ西加奈子星野源レイザーラモンRG

豪華な出演者だし、その中に星野リーダーがいるしで気になっていた「共感百景」。今回は第2回ということで勇んで足を運んだのだけど…チケットは高かったけれどこれは本当に行ってよかった、と心から思えるほどに満足したライブだった。
「共感百景」とは、出されるお題に沿って詠み人が共感詩を作り、多くの人の共感を得た詩を優秀賞として認定していく、「あるある大喜利」を「詩」に昇華させた文学的な遊び。ちなみに前回はなんと星野リーダーが最優秀賞を受賞。そのときの詩は「東京」というテーマに「その名前の劇団には行かねぇ」。今回MCを担当した劇団ひとりは冒頭にそのことに触れ「自分の名前に“劇団”と付くからちょっとグサッと来ました」とさっそくいじられてました。今回は特別顧問として俵万智が審査を行う。「詩を詠むとは、ダイヤモンドを探すのではなく名もない石ころに名前をつけること」「例えば30文字で30文字文の内容だとそれは単なる電報。詩は30文字に100文字やそれ以上の気持ちを込めること」と詩について説明。ちなみに前回は東日本大震災の影響で会場に足を運ぶことができなかったそうで、「前回は誰だかわからないスタッフに審査されてました(やしろ)」。
最初の詠み人はRG、清水ミチコカリカやしろ。解説として有野。RGは今回はケンタロウのモノマネで登場(ちなみに前回は市川AB蔵)。劇団ひとりにRGに清水ミチコにやしろに有野…なんて珍しい組み合わせなんだ、なんて思いつついよいよスタート。最初のお題は「トイレ」。

  • 昭和五十年代に建てられたビルにある和式トイレ 激流と呼ぶにふさわしい流れで流れがち/ケンタロウ(RG)
  • 快便のため独自の呼吸法をフンワリと/やしろ
  • 大をして はやし立てるの男子だけ/清水

ケンタロウさんはいきなり長文。やしろは「俵さんも独自の呼吸法はありますか?」とブッ込み。清水さんは女性ならではの目線。曰く「男の人が飲み会で全裸になってはしゃいでるのって別に面白いと思わない。そういうときはだいたい愛想笑いしてる。」

  • 「あれ?TOTOINAX以外にもウォシュレット作ってる会社あるんだ」っていう瞬間ありがち/ケンタロウ(RG)
  • 出すぎだ!!僕はそんなに食べていない/やしろ
  • 本当の金持ちかはトイレの数を聞け/清水

Panasonicも作ってんだ!ってあるもんね」とはRGの詩に対する家電芸人劇団ひとりのリアクション。ケンタロウさんは「〇〇がち」という個性の押し売りを開始。やしろの詩には客席も笑いつつみんな納得の様子。「小学生の息子がいるんですが、こんなに食べさせた記憶はないのに…ってときがあります」と俵万智顧問。清水さんの詩については「比べるときはトイレの数を聞いたらどっちが勝ちかがわかる。2個?え!3個!?とか。5個以上トイレがある場合はだいたい“訳あり”。例えば林家正蔵師匠のところは7個あって…」と発言し、あそこの家庭は確かに訳ありだもんなー的な空気が流れると「違う違う!弟子が何人も住んでるからって意味での“訳あり”ってこと!」と慌てて訂正していました。今回のステージではやしろの「出すぎだ!!僕はそんなに食べていない」が優秀作品に選ばれました。


第2ステージではいよいよ星野リーダー登場。詠み人にはリーダーの他にカリカやしろ、有野。そして解説にRG。前回優勝者のリーダーは「前回は緊張して終わってしまいましたので、今回は楽しみたいと思います。あと…『ありがち』って便利な言葉だと思いました」と、果敢にRGいじりを決行。それにしても芸人の中にひとりぽつんと解き放たれているリーダーの姿…。しかし、ここ最近では有名人に囲まれているそんな姿も違和感がなくなってきました。今回のお題は「学校」。シンキングタイムではRGがC-C-Bの「Romanticが止まらない」にのせて「教頭先生セダン乗りがち〜」と歌うと会場が沸き、やしろが「オレRGと同期なんですけど、こんなにウケたの初めて見ましたよ!」とコメントし、劇団ひとりも絶賛。調子に乗って会場からお題を募った「アラサーあるある」ではWham!の「ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ」にのせて「アラサーはアニエス・ベー着がち〜」と披露するも今度は不発。それにしてもこの日の…というか、この日もRGは絶好調。そういえば自分が過去に「落合記念館ゲーム」「ダイナマイト関西」などのイベントで見てきたRGはスベリ知らずだ。その記録がこの日も更新されました。

  • 花壇のすみでカサカサで死んでいる消しゴム/やしろ
  • ゲロ スパイラル/星野
  • 理科室の窓 ヌーブラが貼りついている/有野

「なんか、花壇の隅で弾力を失ったスーパーボールが転がっているのを見た記憶があるんです」「子どもが興味を失った瞬間にそのスーパーボールは死んだんです。消しゴムでも同じようなことを見たことがあって」というやしろの解説に対して「“興味を失った瞬間に死ぬ”という表現が素晴らしいです」と顧問。
そして問題の「ゲロスパイラル」は「子どもって簡単に吐くじゃないですか。吐いちゃった子をガキ大将が見に行って、そいつも吐いちゃうとか。そして匂いが教室にも漂ってきてまた吐いちゃう子がいたりとか。」と解説。それに対して「もらいゲロってことですよね?それをこう表現するところが素晴らしい」と劇団ひとりに褒められたり「なんか経済用語みたいですね」とRGにコメントされていました。
そして有野は「なんか、今の子はこういうことやってそうやなーと想像して書いた」そうな。これに対して俵顧問、「実体験だけじゃなくて想像を書くっていうのもひとつの方法です」と褒めちぎり。「学校の教員をしていたとき、これに似たようなことがありました…。女性の…あんまりここでは言えないですけど…」と俵万智が表現を避けようとしているのに「うちもタンポンが…」と早速台無しにするやしろ。そこにRGが「もっとオブラートに包まないと。“白いダイナマイト”とか…」と連鎖。

  • こないだまでは屋上に入れたのに/やしろ
  • 「放送室ジャックか…」じっと手を見る/星野
  • 可愛い転校生など来はしない/有野

「今は完全に立入禁止なのかもしれないですけど、僕のときは途中までは入れたんです。でもある日を境に急に入れなくなってしまって。幼心になにかを察してしまった。」というやしろ。これに対してコメントを求められた星野リーダー「面白いと言うか、切ない感じがして好きです」と発言し、「なるほど!決して面白くはないと!」と劇団ひとりにツッコまれてました。
そして当の星野リーダーは「身近な革命って、放送室をジャックして好きな音楽をかけるっていうことだと思うんです。でもそれをできないでいるちっぽけな自分です」と説明。これに対して「“じっと手を見る”っていうのは石川啄木の歌でありますね」と俵万智に指摘されると「誰かはわからなかったんですけど、なんか聞いたことがあって…」とパクりを謝罪しようとするリーダー。しかし「これは“本歌取り”っていって、元々ある歌を引用するって技なんです。短い言葉の中に立体感を与えるときに使われます」と思わぬ回答。劇団ひとりの「知っててやったんですか?」との問いに「知っててやりました!」と回答。しかし「でもこれを知らずにやっていたのなら、それは啄木と同じ言葉を使ったってことですからすごいですね」と俵万智劇団ひとりの「知らずにやったんですか?」の問いに今度は「…偶然です!」と回答してしまう星野リーダー。
有野のこの詩にはみんなが共感していたものの、ひとりだけ納得しないRG。「うち、過疎地だったんで、転校してきた人はどんな人でも都会的なオーラを纏っている気がしてかっこ良く見えたし、可愛く見えた」「これに賛同している人はみんな都会の人なんだなって思ってた」とのこと。あー、そう言われて思い返してみれば、自分も田舎出身なのでその気持ちも分かる。ということでこのステージの優秀作品は、最後の“RGアシスト”が決め手となり、普遍性を持つ「ゲロ スパイラル」に決定。リーダー、今回も優秀賞ゲット。


長くなったので次回に続く!