「Loser's Parade」

for さえない日々

風呂ロック vol.19 - 星野源@吉祥寺弁天湯

※2011年に行われた「風呂ロック」についてはこちら
風呂ロック」というイベントで、SAKEROCK星野リーダーの弾き語りを見に行ってきました。会場は吉祥寺にある弁天湯。「風呂ロック」という名前が示す通り、銭湯が会場です。休業日を利用して行われているようで、浴場内に高いステージを組み、男湯側、女湯側からでも見られるようにしているようでした。…ようでした、というのは、開演ギリギリに到着したため、すでに浴場内は人でいっぱいで入れず、ガラスを隔てた脱衣所から終始見ていたからです。というわけで会場は銭湯。男湯女湯どちらから入ってもいいと言われたら…正常な男性ならやっぱり女湯に行くでしょう!と、当然のように女湯側から見てやりました。女湯に入るなんて経験、今後銭湯を経営するか勤務するかしない限りないわけですからね。まぁ、結局は途中から男湯側に移動しましたが。自意識過剰っぷりを発揮してすいません。なんだか急に恥ずかしくなってきまして…。

さて、大まかな流れを軽く先にレポートしておくと、今回は初披露の曲が5曲ありました。春に細野さんのレーベル(デイジーワールド・ディスク)からソロアルバムを発表するとのことなのですが、それには圧倒的に曲数が足りないらしく、現在曲を生産中のためだそうです。これは非常にラッキーでした。また、今回はワンマンで2時間という持ち時間だったため、事前になぜか「さだまさし」の映像を見て来たらしく、それに影響されたMCを試みるも、結局あまり広がらず…というゆるいトークが合間合間に挟まれていきました。そして後半には予想通りハマケンがバスローブ姿で乱入。それまではアットホームでほのぼの進行だったのが、いっきに会場内ヒートアップ。しまいには『京都』や『信長』を披露し、場を荒らしていきました。
さて、いちいち細かくMCの内容だとかレポートするのもだらだらと長くなるだけだし、そもそもそんなに細かく覚えてはいない。ということで、ここで初披露だった新曲についての感想を書き連ねていきたいと思います。おそらく今回行けなかった方々はそのあたりが一番気になるだろうし。一度聞いた限りのため、ニュアンスや歌詞の内容は間違えている可能性もあります。そのあたりはご了承を。

  • 『キッチン』

「ふと気づくとキッチンで寝ていた」と始まる唄。「おかずのにおいだけを残して」「繋いだ右手を深く沈めて」などという歌詞から、「別れの唄」という情景が広がる。リーダーの曲って、『穴を掘る』にしても『選手』にしても、どこか「お話」を歌詞で作るという印象があったのですが(『ばらばら』は割と恋愛に置き換えられるような歌詞ではあったが)この曲は今までになく身近でリアルな風景を書いている印象(ちゃんと歌詞を読んでみたらもしかしたら違うのかもしれないけど)。なんだか魚喃キリコの世界観のよう。Bメロの感じが好き。

  • 『茶碗』

「あれ?昔、こんなタイトルの短編小説書いてなかったっけ?」と思ったけど、家に帰って未来創作を開いてみたら、それは『急須』でした。そんな『老夫婦』に続く“老人三部作”の第2弾(あと1曲作って三部作にしたいらしい)。内容は長く使用している茶碗とともに日々の夫婦の生活を唄ったもの。ここでビックリしたのが、ピックを持ってストロークし始めたこと。普段は指弾き、ツーフィンガーでギターを爪弾く演奏スタイルだったのが、急にコードをがしがし鳴らすスタイルに変化し、なんだか「らしくない」印象。ただ、相変わらずひねくれたコードだし、間奏ではSAKEROCKのバッキングギター風の演奏で、「あ、こういうところは、『らしい』な」などと思ってみた。そんな演奏スタイルだったので、曲調は歌詞の内容も相まってハッピーな感じ。

  • 『こども』

ド直球のラブソングのように聞こえた。女性目線から書かれたその歌詞には『ぼんやりとちゅーするの』なんて歌詞があったし。しかし、途中で『こどもとこどもが出会ったなら そのままおとなになったらいいね』という歌詞があったために、急に「男の子と女の子が大人のふりをしている」光景(イメージとしてはイエモンの『JAM』のPV)を浮かべました。演奏後のMCで真相は「ラブソングを書こうとしても恥ずかしくなるので、シングルマザーやシングルファーザーの曲、という視点で作った。ラブソングにも聞こえるでしょ?」ということらしい。

  • 『兄弟』

こちらも『茶碗』同様、ピック使用のストロークで。やたら元気に「夢でしか会えないようにできている」「誇り高い兄弟」「謎の兄弟」という感じで、なんだかアニメのオープニングテーマみたい。リーダーの解説によれば、「知り合いに、『お前には本当は、弟がいたんだよ。だから、お前は2人分生きなさい』と言われた人がいて、不謹慎だけどちょっといいなぁって思ったので作った」とのこと。曲調としては、これこそ本当に「らしくない」感じ。今までで一番テンポが早いと思う。弾き語りなのだが、ストレートにバンド編成で編曲ができるような感じで、語弊があるかもしれませんが、「ゆず」が歌っていてもおかしくない感じでした。

  • 『ひらめき』

この曲は、アンコールが起こった後に再登場したものの、もう持ち曲を全部披露してしまったリーダーが、「現在作りかけの曲を唄います」と披露した、言わばデモバージョン。しかし、披露しようとしたもののなにせまだ制作段階の曲。前半でいきなり間違えてしまったリーダーは「ハマケーン!助けてー!」とヘルプを出してしまいました。再登場したハマケンがここで『信長』を披露し会場を温めた(混乱させた?)後に再度挑戦。少し不協和音を混ぜたフレーズを爪弾きながら、「ひらめき」「きらめき」「ざわめき」「かがやき」というワードをタームごとに乗せていました。作成段階と言うだけあり、1〜2分程度の短さ。

新曲の中では、個人的には情景がすごく広がった『キッチン』という曲が好きでした。音源化されるのが楽しみです。さて、新曲以外にも、もちろん既存曲も披露していました。星野リーダーの曲の特徴としては、まずSAKEROCKの曲に歌詞が付いたものが多いこと。これは、実は順番としては逆で、元々は歌詞が付いた曲を、SAKEROCKではインストで演奏しているようなのです。そのため、「ああ、この曲にはこんな歌詞が付いていたんだ」という新たな発見ができるのです。そういう体験は既出CDブックである「ばらばら」の中にあった『選手』や『穴を掘る』でできたのですが、中にはSAKEROCKで演奏していないものもあります。それは代表曲でもある『ばらばら』であり、今回自分が特に印象に残った『夜中唄』でした。ちなみにこの曲は「ばらばら」には入っておらず、「ばらばら」を出す2年前、限定200枚で星野自身が自主制作した「ばかのうた」にしか入っていません。限定200枚のため、あっという間に完売になったのですが、当時リーダーはブログで「持ってる人にコピーしてもらってもいいですよ!」と呼びかけており、おかげで自分は親切な方からコピーしていただき、無事に手に入れたのでした(手にいれたのは数年後、しかも福岡で)。生で聴いた『夜中唄』はCDで聴くよりもキーが高い気がしました。でもやっぱりとってもいい曲。どうせならおなじく「ばらばら」未収録の『次は何に産まれましょうか』(確か元は劇団「猫のホテル」に提供した曲なんでしたっけ?だから歌詞は千葉雅子さんだったような気が…違ったかな?)もやってほしかった…。
あとは特徴的なのはカバー曲。今回は計2曲。頭の方では細野さんの「HOSONO HOUSE」に入っている『冬越え』。この曲、元はホーンも入っていて飄々とした曲なのですが、星野マジックにより実に寂しい仕上がりになっています。ちなみに20歳の頃から歌い続けているらしいのですが、あんな飄々とした曲をこんなアレンジにしてしまった20歳の星野青年に何が起こっていたのか心配になってしまいます。もう一つは、以前スペースシャワーTVの「SPACE SHOWER MUSIC UPDATE」でも披露したキセルの『君の犬』をハマケンを一緒に披露しました。
さて、今回のライブですが、ひとつ残念なことがありました。それは、後半に泉谷しげるバリに予定調和の乱入を行ったハマケンのマイクが、我々がいた脱衣所のスピーカーからは流れてこなかったことでした。そのため、トロンボーンは生でもまだ聞こえてくるものの、ハモっているハマケンの歌声、更には乱入後のMCのやりとりがほとんど聞こえないという状態になってしまいました。これは結構キツかった。正直、浜野さん乱入のありがたみが7割減。これは改善していただきたかった。機材について詳しくないので適当なことしか言えませんが、チャンネルが少なかったからか何かなんでしょうか。


自分は星野リーダーの弾き語りライブを体験したのは、今回が2回目となります。星野リーダーの弾き語りと言えば、今から4年ほど前にfoodstockのイベントだったか何かで下北沢mona recordsで夜中に弾き語りライブをやっていたのですが、当時京都に住んでいた自分はハンカチを噛み締めて、後日ネット上に上がっているレポートを読みあさっていたものでした。その後も少ないながらも定期的に弾き語りライブを行っているのですが、今回ようやくちゃんとした、しかもワンマンで見ることができました。ちなみに初めて見たのは日比谷野音で行われたザンジバルナイト。そのときは持ち時間もあまりなく、傍らに勝手に曲に合わせて踊っているハマケンがいたためにあまり集中ができませんでした。だから実質この日が初めて弾き語りを見たと言ってもいいでしょう。ただ、これは今となっては実現できないことなのでしょうが、できれば数年前に行っていたような、狭い会場ながらも適度な客数の中、じっくり座って見てみたかったとも思いました。現在東京に住んでいるため、環境的には地方在住者よりよほど恵まれているのですが、2005年年末のあの頃、ハンカチを噛みしめてレポートを読み漁ったあの雰囲気のライブを体感したかった、と思う次第です。まぁ要するに、もっとソロライブをやってください!ということです。

01. インストバンドの唄
02. 冬越え
03. 選手
04. 老夫婦
05. キッチン(新曲)
06. 茶碗(新曲)
07. 夜中唄
08. ばらばら
09. ばかのうた
10. こども(新曲)
11. 兄弟(新曲)
〜ハマケン乱入〜
12. 穴を掘る
13. 君の犬(キセル カバー)
14. めがねのうた
15. 京都
〜アンコール〜
(en0. ひらめき)
en1. 信長
en2. ひらめき

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