「Loser's Parade」

for さえない日々

さよなら20代 〜『日清カップヌードル 10年タイムカン』

今から10年前の2000年に日清が発売した「タイムカン」をご存じですか?「10年間保存可能」というコンセプトのもと、缶詰の中にカップヌードルが入っているという商品です。当時私はその商品を購入し、何かのネタになるかもとずっと保管し続けてきたのですが、いつしか10年後に開けることが楽しみになり、幾度かの引越しを経てもずっとこの缶を保存していました。そして賞味期限切れとなる2010年。ついに開封する時が来た。さて、いったいいつ開けてやろうか、なんて思っていたのですが、しかしそれは叶わぬ夢となってしまったのです。なんと、すでに2004年3月の時点で自主回収商品となってしまっていたのでした。
http://www.nissinfoods.co.jp/utility/timecan.html
10年保存計画って言ってたのにたった4年でダメだったの!?…愕然としました。結局10年保存していたにも関わらず、この缶は役目を果たしてくれなかったのです。いろいろ検索してみたら、このタイムカンについて記載しているブログが数々存在しており、中にはあえて開封し食したレポートもありました。
2000→2010 【十年缶保存計画】カップヌードルタイムカン開缶フォトレポート - FUKISOKU DAYS
タイムカン10カ年計画
カップヌードル・タイムカン回収とのことで開封してみた | Wolfish BLOG
このネタを消化するには、もちろん食べてレポートすることが面白いのですが、数々のレポートの中にあるとおり「刺激臭がする」「とても食べられたものじゃない」という評判、そして何よりすでに食べているレポートがあるために二番煎じ、三番煎じとなり、体を張る割には特に盛り上がらないという懸念点があり、おとなしく里子に出す(回収してもらう)ことを即座に決意。大人の判断です。
また、ちょうどこのタイムカンを購入した当時、私はちょうど20歳。そこから10年経ったということは、単純に20代をこいつと共に過ごしてきたということなのです。それならばと、20代最後の日である本日2010年5月29日に、こいつとお別れをしようじゃないかと決意したのです。30代に突入する前の禊(みそぎ)的なことです。この缶を回収させてから、私は30代の第一歩を踏み出そうと思ったのです。

それにしてもこのタイムカン、本当によくぞここまでもっていたと思う。埃だらけだ。

2000年当時、私は京都の大学2回生。2000年問題だミレニアムだと世間の盛り上がりがまだ続いている2月、付き合っていた彼女に二股を掛けられた上で別れ(しかもその二股のことを周りはみんな知っていた)、若干、対人恐怖症的なことに陥ってしまった。そこからは見事な転落。あれだけちゃんと講義にも出ていたのに、徐々に教室から足が遠ざかり、昼に起きてバイトに行って男友達と朝まで酒を飲むのを繰り返すような、絵に描いた「ボンクラ学生」だった。その頃、関西人特有の「笑い」という洗礼を浴び、何かひとつは話せるネタを持っておかなければならないという強迫概念に襲われていました。ある日コンビニ立ち寄ると、安売りをしているワゴンがありました。コンビニで安売りをしているというのは、要するに賞味期限が近いものか、売れ残りのもの。その中に、このタイムカンがあったのです。なんとなくタイムカンの存在を知ってはいましたが、特に気にはしていませんでしたが、強迫概念に襲われていたあの時、安売りという後押しもあったためか「これが部屋にあったら面白いかな…」と、今考えたらそれがなぜ面白いのか全く理解できない理由で購入したのです。
そこから、なんとかまた女性と付き合い始めるも見事に前回同様二股をかけられて心に闇を背負った時も、自分を変えたい思いが間違った方向に出てしまい金髪にした時も、そのときやっていたバンドがそこそこうまくいって東京でレコーディングなんて話をもらったものの、いざやってみたらあまりの自分の演奏能力のなさに「あ、オレは音楽で食っていくことは無理だ」と悟った時も、熱心に就職活動しなかったために後々後悔することになる会社に就職が決まった時も、学生時代を終え社会人となった時も、バンドが解散したときも、営業職があまりに辛くて鬱々していた時も、このブログを始めた時も、突然の辞令で広島に転勤になった時も、広島で一切友達ができなくてどん底だった時も、突然の辞令で今度は東京に転勤になった時も、東京営業所が合わずに2ヶ月で辞めてしまった時も、無職で失業保険と貯金で暮らしていた時も、新しい会社に入って心機一転できた時も、なんだかんだで結婚できた時も、ずっとその缶は傍らにありました。それが、オレの20代です。

ふてくされてばかりの20代をすぎ分別もついて歳をとり、夢から夢といつも醒めぬまま僕は30代の世界へ駆けていこうと思うのでした。

さよなら、私の20代。今度会うときは…

500円の図書カードとなって生まれ変わるんだな。