「Loser's Parade」

for さえない日々

DAISY HOLIDAY! 6/13 (ゲスト:星野源)

数々のラジオに出演している星野源。その中で、特に興味深かったのはやはり細野晴臣の番組であるInter FMDAISY HOLIDAY!」でしょう。最近のメディア出演しまくりの状況で初対面の人と話していて緊張している機会が多かったリーダーですが、勝手知ったる細野さんの番組。ここでも多少の緊張をしているものの、やはり少しリラックスしていた様子でした。また、いろいろと面白い話を聞けたため、「ばかのうた」発売日である本日、ここに記録として残しておこうと思います。

<オープニング>
細野 あーこんばんは、えー…細野です。今日は、久しぶりにゲストをお招きしてます。どーもー。
星野 どーもー、星野源です。お久しぶりです。
細野 久しぶりだったっけね?
星野 そうですね。前回は多分2年前ぐらいに出させていただいて…。
細野 そうか(笑) そんな前…
星野 確かそのくらいだったと思います。

ゆったりと始まった放送。ふたりともリラックスしている様子が伝わってきます。

細野 でもライブで会ってるよね、最近。
星野 そうです、そうですね。
細野 あんまり…ライブの時はあんまり話さないよね。
星野 そうですね。あの…(笑) この間でも、福岡のスプリングフィールズで「SAKEROCKにはボケとツッコミがいていいな」っていう話をされましたね。
細野 いやー、面白かった。
星野 ありがとうございます(笑)
細野 あのー、僕はいつもひとりでやってるから、喋るのひとりだからね。うらやましかった。
星野 (笑)
細野 ゴッドファーザー面白かったね!彼(ハマケン)の…
星野 (笑) あれは面白かったですねー。
細野 ああいうときは一回聞いちゃうの?それとも「あー、またやってる」みたいなこと?
星野 あれはですね、実は一応あのー、ネタ見せが(笑) 出番前にあって、もうちょっとこうした方がいいんじゃない?みたいなやりとりがあるんですけども。あんまり口を出さない、本番中は口を出さないのは一応原則になってるんですけど…。
細野 なるほどね。そういってもね…具体的に言わないとわかんないけど、マネできないからな、僕は。
星野 そうですね(笑)
細野 マーロン・ブランドのマネがうまいよね。

SAKEROCKのライブで恒例となっている『Old Old York』の曲中のハマケン漫談コーナー。ハマケンのネタについては出番前にネタ見せが行わているとのこと。ミュージシャンがライブ前に、メンバーに対してネタ見せを行っているだなんて、SAKEROCKくらいなものでしょう。それにしても、福岡のスプリングフィールズでは、「ゴッドファーザー」のネタをやったのか。いったいどんなんだったんだろう。まぁ、きっとくだらないものだったのだと思います。そんなことをやってるため、細野さんからは「SAKEROCKって元々演芸っぽいところを目指してたんだっけ?」と言われてしまう始末。こんなムダなことをしている理由は「インストバンドだからしゃべることがあまりないので、かっこよくなってしまう」ためとのこと。結成当時に誓った「既成のものと違うこと」をやろうとした結果なのでしょうか。そうなると、先程書いた「ネタ見せしているバンドはSAKEROCKくらいなものだ」というのは、狙い通りなのですね。この話を聞いて細野さんには「そうか…SAKEROCKって、インストバンドだったっけね」という感想を漏らします。もはやSAKEROCKは「インストバンド」という既存の名詞すら拒んでしまう存在なのかもしれません。
イチオシ曲である『くせのうた』をフルコーラスでかけた後、星野ソロ曲の魅力について細野さんが語ります。

<『くせのうた』が流れた後>
細野 いやいや、いい歌だな。
星野 ありがとうございます(照笑)
細野 「星野節」っていうのがあるんだね。
星野 あ、本当ですか?ありますか?
細野 なんか、アルバム全部聴くと、やっぱり「あー、あるんだなー」って思った。なんかね、キュンとするとこが必ずあるよね、曲の中に。
星野 あ…それ、すごい嬉しいです。
細野 なんだろう?コードワークなのか。それだけじゃないんだけど。独特のコードワークだよね。コードを付けるというか。
星野 「キュン」というのは、切ない感じみたいなことですか?
細野 なんか、何とも言えない、グッとくる…メロディーと、なんか全体にね。なんか、1曲ずつそれがあるんだよね。
星野 なるほど…
細野 SAKEROCKとはまた違うよね。
星野 そうですね。
細野 かなり、パーソナルなサウンドと言うかね。僕もこういうの、作ろうかなっていま思ってたの。
星野 あ、本当ですか?
細野 ソロ。でも、先越されちゃった…。
星野 (笑)

星野ソロの魅力は全体に被さる「キュン」。それは、独特のコード使いはもちろんのこと、メロディーや歌詞、アレンジやリズム、そして彼の歌声などなど、様々な要素が重なりあってできたもののようです。そういや自分も初めて星野ソロを聴いたときは、その独特な世界観に驚いた記憶があります。複雑なコードはときどき不協和音を奏で、詩の世界も物語性が強く、「こんなの初めて!」な体験でした。
話は変わり、話題はもうひとつの面、俳優として出演している「ゲゲゲの女房」になります。ちなみに細野さんはまだゲゲゲで星野リーダーを見れていないようです。夜型人間のため、毎朝見るという行為がなかなかできないそうな。そういう星野リーダーも、「見たよと言ってくれた人はあまりいない」らしく、朝ドラ出演の効力を実感していないっぽいです。まぁ、かくいうワタシもようやく今週、ちらっと見出した程度なのですが…。ちなみに今年は「役者業は『ゲゲゲの女房』くらいで、あとは音楽に費やそうと思っている」とのこと。SAKEROCKも夏にレコーディングがあるため、今年の星野リーダーはミュージシャン比率が高いようです。そんな二足のわらじ(今や文筆業や映像制作と、何足のわらじを履く気だ!という感じですが)を履くことについて、

細野 「よく切り替えられるね」みたいな話はしたことがあるよね。
星野 そうですね。でも個人的に切り替えてるっていう自覚は全然なくて…。あの、なんて言うんですかね…なんとなーくやり過ごしてるって言うか(笑)
細野 それは天性のものだね。なんとなくできるっていうのはすごいよね。
星野 できてるのかな…。でも、細野さんもCMだったりいっぱいしてるじゃないですか。
細野 あれなんとなくやってるんじゃなくて(笑)切り替えないとやっぱり…。
星野 あ、そうなんですか。
細野 カメラに撮られるっていうのは、僕はどうも向いてないって言うかね。
星野 そうなんですか。あ、でもあれですよね。面白い、ちょっとコメディっぽいものになると、すごく得意じゃないですか、細野さん。
細野 俄然生き生きして(笑)
星野 妻夫木君のやつは結構マジメですもんね。
細野 ちょっとね、嫌なんだよね、マジメで。
星野 (笑)
細野 いい人ぶる感じが嫌なんだよね。
星野 あの、全然規模は違いますけど、その感じはわかります。
細野 ま、いい人なんですけど!
星野 (笑) 実際はいい人なんですけど。
細野 別に隠してはいないんだけど。

細野さんのユーモア炸裂。その後、細野さんは「コメディやりたいなぁ…でもなかなかやる機会がないんだよなぁ…」と話し、「今は不況だ」という話題に移ります。「不況だから暗いニュースばかり。だからお笑いばかり見ている」「暗いニュースを見ちゃうと“あたっちゃう”のでその後の作業が出来なってしまう」とセンシティブな星野に対して、「それはまだ若いから」「こんだけ歳を取ったら面の皮が厚くなる」とアドバイスを行う細野さん。まだ20代だという星野に対して、星野父よりも年上である自分との関係について話し始めます。

細野 だからねー、なんか不思議なんだけど。どういう感覚なんだろうな、僕。友達なのかな?
星野 でもあの、えーと、なんて言えばいいんですかね…40代くらいの先輩の人より、やっぱりそのもう一個上の、お父さんに近い世代の人の方が、なんて言うか、壁がない気がします。
細野 本当?なんかこう、わかった!ライバル感が持てないっていうか(笑)
星野 そういうことなのかなーって思うんですけど…。みんな優しく(笑) 接してくれます。
細野 優しくしてもらってるのはこっちだよ。
星野 いやいやいやいや(笑)僕の方が…はい。

すぐ上の世代だとライバル心が働いて少し壁ができてしまう。しかし、もっと上の世代となると、ライバル心というより親子の関係性に似た感じになるのでしょうか。そんな年の差コンビが共作した曲『ただいま』が流れます。その後、曲にまつわるエピソードが話されます。

<『ただいま』が流れた後>
細野 というようなね、カントリー…展開だけがカントリーみたいな曲を提供して。
星野 すいません、いっぱい編曲してしまって。
細野 いやいや!だって、僕もやるつもりなんで。
星野 あ、そうですよね。
細野 ね、違う方がいいんだろうけど。いまだにあの、「Take me back〜」っていうとこのコードを、星野君の作ったアレンジのコードが、いまだに解析ができないんだよ。
星野 (笑)
細野 不思議な…
星野 すいません(笑)
細野 どういう構成になってるのかが、僕にはわからない。ミステリアスな。
星野 いやー、なんか、僕もあまり自分ではわかってなくて、あのー、自分なりにちょっとこう、やってみよう!って思ったら何となくこのコードになったんですけど。なんか…そうですね、サウンドも本当は、本当って言うか、細野さんが送ってくれたものってすごいこう、もっとシンプルなカントリーソングだったじゃないですか。
細野 そうそう。
星野 なんか、こう…最近の細野さん…なんて言えばいいんですかね…聞いただけで「あ、細野さんの曲だ」って思ってもらいたくって、でも最近の細野さんはやらないようなアレンジにしたいなーって思って。
細野 そうなんだよね、やってないね。
星野 それに自分の思いを入れようと思って…。

なんと、『ただいま』は細野さんのソロ作品にも収録されるとのことです。テレビブロスの連載で約束されたことが、こうして実現されました。違いを聴き比べるっていうのもとても楽しみです。それにしても細野さんでも星野コードの解析が難しいとは…。その流れから、続いて星野リーダーの作曲の特徴について語られます。

細野 なんか、星野君の書いてきた譜面って言うのかな、コード、ギターのコードがばーっと書いてあって。
星野 はいはい。
細野 すごい、なんかこう…1小節に4回くらい変わるでしょ。
星野 はい(笑) すいません…(笑)
細野 (高田)漣くんとかに聞いたら「大変だ」って言ってたよ(笑)
星野 そうなんですよ。伊賀(航)さんももう「大変だ」って言いながら、みんな…。
細野 結構ジャズなのかな?(笑)
星野 僕はすごく普通にやってるつもりなんですけども、みんなからすると「これジャズっぽいね」って言う…。
細野 聞くとね、シンプルに、伝統的な感じもあるわけ。フォーキーなね。でも、実は違うんだよね、本質が。なんだろうね。だからSAKEROCKも面白いしね。
星野 なんかこう、自分で飽きないようにしたいなぁというのはずっとあって、でもあんまりこう…歌声っていうか(笑) 歌い上げれないので、コードで工夫するっていうのが多分、いつもやっていることなのかもしれないですね。
細野 でも、なんだ、フォークは好きなの?
星野 あ、好きです好きです。
細野 さっきかけた『くせのうた』っていうのも、言葉遣いがこう、高田渡みたいな感じもしたしね。
星野 あー、本当ですか。なんか、僕、高田渡さんも大好きですし、細野さんが弾き語りでやってる、たまにライブとかで弾き語りで、ひとりでやってるのがすごく好きで。
細野 あ、本当?
星野 昔、小学校のときとかは…B'zとか、ユニコーンとかを聴いてたんですよ。
細野 ええ!?それ知らなかった(笑)
星野 (笑) 歌い上げる、「ヒョーー!」みたいなのが好きだったんですけど、中学生くらいでそれが自分に合わないっていう…。
細野 あ、じゃあ似てるわ。僕もビーチ・ボーイズ聴いてた(笑) 歌えないっていう。
星野 そうなんですよ、同じ…。それで細野さんはジェームス・テイラーに「あ、これでもいいんだ」って思ったって話を…
細野 そうそうそう。
星野 僕はそれが細野さんだったんですよ。「あ、普通に歌うのでこんなに感動できるんだ」っていうのを思って、「僕もこういう歌い方にしよう!」って思ったんです。
細野 そうだったんだ。伝染してく訳だね。
星野 そうですね(笑)

「自分でやっていて飽きないようにするため」「本当は歌い上げたいけど、それができないからコードで工夫する」というのが、独特なコード使いと譜割に繋がるということだそうです。星野弾き語りで自分が一番好きなのは、細野さんも言っていますが、一拍ごとにコードが変わっていくところ。初めて見たときに、これがとても印象深かったのを覚えています。コードをジャカジャカとストロークするようなわけでもなく、それこそ高田渡のようなつま弾く姿は、中津川フォークジャンボリーの世界。それが21世紀の今だと逆に新しいのかもしれません。そして、同じく歌い上げることができなかったけど「普通でいいんだ」と気づいた細野さん、それを受け継いだ星野リーダー。二人がこうして近づいたのも必然だったのかもしれませんね。
その後、ライブ告知の際に「漣君は出るの?」という問いには「まだ調整中なんです」との回答でした。ちなみに細野さんは渋谷クワトロに見に行くというような話もされていましたので、当日お見かけすることがもしかしたらあるかもしれません。


長くなりましたが、このように二人の会話はどれも興味深いものばかりでした。今回のソロ作品のキーワードとなるような話も出ていたかと思います。そしてこの会話は、今後もテレビブロスの紙面上で続いていくのでした。